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湯を沸かすほどの熱い愛 (2016)

監督
中野量太
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3.89 / 評価:5,361件

見た者の心を沸かすほどの熱い映画

  • tyaichiro さん
  • 2016年11月1日 16時52分
  • 閲覧数 8493
  • 役立ち度 154
    • 総合評価
    • ★★★★★

「余命わずか」を宣告された双葉(宮沢りえ)。しかし、彼女は決して負けない。彼女の周りにいる現実に立ち向かえなくなった者一人一人に「生きる」ことを教え、そして彼女は死んでいく。

 これは現代版『生きる』なのではないか、と思った。死にゆく者こそが最も強く生き、その「生」を他者に分け与えるという美しい逆説。
 所謂「難病モノ」やお涙頂戴の家族映画だと高を括り、上から目線で見ている観客を裏切るようなストーリーの転がり。そして、何より今作は中野量太監督の商業映画デビュー作品ながら、監督が一貫して描いてきた「強い母」「家族が家族になる映画」の集大成であった。

 まさに「心を沸かすような」、見た人に「生」を伝播する熱い一本。
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 監督は「『あ、生きなきゃ』と思ってもらえるような映画を作りたい」と言う。
 そういえば、中野監督が文化庁若手作家育成プロジェクトに選出された『琥珀色のキラキラ』の主人公が父の糖尿病を心配するシーンが、黒澤明監督『生きる』の胃ガン宣告(胃潰瘍宣告)のシーンと同様の演出だったことを思い出した。
 残りわずかの命を宣告されながら、決して「悲劇のヒロイン」にならない主人公。そんな主人公が家族や出会った人に「生きる」ことを伝えていく、その波及の様子はまさしく『生きる』なのだと思う。
 いじめにあっている娘、家族に向き合えない父親、過去の罪を背負って生きている女性、生きる意味を失い生きながら死んでいる若者……全ての登場人物が主人公から「生」を分け与えられ、家族を形成していく。

 そして、宣伝文にもあるような衝撃のラストを迎える。このラストを見て流れるのは「悲しい」とか「切ない」とか、一般的な泣ける映画のそれとは一線を画す。そのわずかな命で家族のために、他者のために、命を燃やして生きた女性による最後の生命の炎、その力強さに、私はボロボロと涙を流した。
 彼女は死してなお、立ち昇る、前に進もうとする。「生」を分け与えて死んでいった主人公の、熱い「生」が街に、大気に、天に、広がり、まだ伝播し続ける。その「生の伝播」の一部始終を見た観客が劇場を出て思う「あ、生きなきゃ」、この映画自体が力強い「生」に満ちていた。

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