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ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ (2015)

GENIUS

監督
マイケル・グランデージ
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3.62 / 評価:495件

人生 (自伝的小説) を削除された男の物語

  • GODOFGOD さん
  • 2016年10月21日 19時06分
  • 閲覧数 470
  • 役立ち度 2
    • 総合評価
    • ★★★★★

GENIUS    (2016:イギリス/アメリカ) 
監督:マイケル・グランデージ 
脚色:ジョン・ローガン 
原作:A・スコット・バーグ著『MAX PERKINS:EDITOR OF GENIUS』(名編集者パーキンズ) 
音楽:アダム・コーク 
出演:コリン・ファース /ジュード・ロウ /ニコール・キッドマン
   ローラ・リニー /ガイ・ピアース /ドミニク・ウェスト 



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《物語》
1929年、ニューヨーク────チャールズ・スクリブナーズ・サンズ社に勤める編集者マックス・パーキンズ(コリン・ファース)のもとへ無名作家の原稿が届けられる。その作家のパトロンのアリーン・バーンスタインによる業界のコネで送られたものだった。“失われしもの” と題されたその原稿に目を通すと、非凡な才能を秘めた作家が書いたものだと見抜く。
その翌日、「ヘミングウェイやフィッツジェラルドを世に出した名編集者に会いたい」という男が突然訪ねてきた。その男の名はトマス・ウルフ(ジュード・ロウ)。“失われしもの” を書いた作家だった。トムの才能に惚れ込んだパーキンズは彼の小説を出版することを約束する。長過ぎる文章を編集するパーキンズと修正を行うトムとの共同作業により、遂に処女作『天使よ故郷を見よ』は完成する。
大きな成功を得たトムは2作目に取りかかるが、彼の愛人アリーン(ニコール・キッドマン)は、トムの心が次第に離れていくのが許せなかった。そして、大作を書き上げたトムは単身ヨーロッパへと旅立っていく・・・


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【感想】
舞台演劇としての面白さが備わっている作品。しかし編集者の話にも関わらず編集が不味いのはやや致命的と思える。原作は未読だがぜひ読んでみたいと思わせる内容(脚色)ではあった。
そしてスコアがとても良かった。特にエンドロールにかかる曲は全盛期のジョン・ウィリアムスのような荘厳なオーケストラサウンドが耳に残った。

特筆すべき点は、あまり目立たないニコール・キッドマンがとても重要な役どころであるということ。一見、コリン・ファースとジュード・ロウの二枚看板のように思えるが、ニコールやF・スコット・フィッツジェラルド役のガイ・ピアースがいい芝居をしていて共感できた。

舞台の衣装担当のアリーンは仕事と家庭の両立に悩み、そして一度は家庭のためにすべてを捨てた。子供たちが成人して自分の人生を見つめ直すとそこに“彼”の存在があった。仕事で疲れはてた彼女を癒す存在の売れない作家。しかしその彼が売れていくと彼女の側から離れていく。
結局、アリーンもトムも互いに“殻”を利用していただけ。そのことに彼女が気づいた時、愛というものが何か、人生とは何かを見つめ直す。自分に言い聞かせるようにトムにも同じことを助言して本作での彼女の出番は終わる。

人生という川の流れの中で、トマス・ウルフという流木にしがみついていたアリーン。
しかしトムは時の彼方へ消え去った。

同様に、パーキンズもまた、トマス・ウルフ、ヘミングウェイ、フィッツジェラルドという大きな流木を見つけ利用し生き永らえる出版編集者。彼らが人生を賭け書き上げた本も売れなければその生活は失われていく。
自殺さえ思いたったフィッツジェラルドに対してパーキンズは、死の間際まで執筆を行い『回想録』を書き上げたユリシーズ・グラントを引用し、小説を書き続けるように説得する。病気の妻ゼルダを想う彼の優しさと、彼を利用している罪悪感から生活費の足しにとお金を渡す場面は印象的で心に残る。
まるで教会で告解を行う信者と神父のような一場面。編集者室の窓から光が射すパーキンズのシルエットが美しい。
妻ゼルダの看病のために仕事ができない辛さというのは、個人的に胸に突き刺さるものがあり、トマス・ウルフとフィッツジェラルドの繋げ方がやや強引な繋げ方だとしても、作品の本質を優先して善いものだと考えたい。


タイトル『GENIUS』(天才/守護神)は、天才トマス・ウルフのことを示し、彼の才能を見出だした守護神、パーキンズやアリーンのことでもある。自伝的小説を遺したトマス・ウルフは小説家としての成功を求めたのではなく、その存在を知ってもらいたかっただけの純粋な男。友人に送られたその謝辞の手紙は、彼の原稿と同等の価値があるトムの人生そのものだった。

他人の手紙を書き変え削除する人間は誰もいない。
しかし作品(小説)は、作り手と出版社の共作であるという暗黙の了解がある。
彼の “短い人生” を表したその “長過ぎる原稿” は、削除すべきだったのかどうか・・・
己の人生を言葉で残したかったトム、その大事な言葉の一部を彼に削除させたのはパーキンズを友人として信頼していたから。
そのことに気づいた時には、彼はもう彼岸へと旅立っていた。

ロマンティシズムに溢れた作品。
色々足りない部分はあるが悪くない。

詳細評価

物語
配役
演出
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