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エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に
2016年11月5日公開

エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に

EVERYBODY WANTS SOME!!

PG121172016年11月5日公開

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4.0

80年代とモラトリアム

2016年。リチャード・リンクレイター監督。1980年。野球で奨学金を経て大学に進む主人公が、新学期が始まるまで野球部員だけの寮で過ごす3日間。新しい世界に入っていきながら、同時に自分探しに迷い込む、誰もが経験するモラトリアム期間。漠然と未来を信じて楽天的に他者と触れ合っていた80年代の大学生活を活写する。今から思えば、80年代自体がモラトリアムだったのだ。 主人公は野球をやっているが、プロになれるとは信じておらず、なんとなく生きている自分に不安を感じている。周囲には、そんな不安など全く感じていない者もいれば、その不安にこたえるかのように真剣に考えている人間もいる。いずれにせよ、享楽的に現在を充実させようというパワーは漲っており、モラトリアムが静的で退廃的な「永遠の死」ではなく、動的で活力あふれる「永遠の生」だったことがよくわかる。当時の大学生は、一瞬も無駄にせずに享楽していたのだ。なんたる欲望。 いまやそんな欲望を抱く余地はなく、大学生も、社会全体も、一歩先の未来を見つめて用心深くせちがなく生きているのではないか。

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