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シークレット・オブ・モンスター (2015)

THE CHILDHOOD OF A LEADER

監督
ブラディ・コーベット
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2.80 / 評価:357件

解説

ジャン=ポール・サルトルの短編「一指導者の幼年時代」を基に、政府高官を父に持つ美しい少年が狂気の独裁者へと変わるさまを描くミステリー。後に独裁者となる少年を新星トム・スウィートが演じるほか、『アーティスト』などのベレニス・ベジョ、『ニンフォマニアック』シリーズなどのステイシー・マーティン、『トワイライト』シリーズなどのロバート・パティンソンらが出演。『ファニーゲーム U.S.A.』などの俳優ブラディ・コーベットが監督を務めている。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

ヴェルサイユ条約締結直前の1918年、フランスにやって来たアメリカ政府高官には信仰心の深い妻(ベレニス・ベジョ)と、人形のようにきれいな息子(トム・スウィート)がいた。しかし、その少年は教会へ石を投げたり部屋に閉じこもったりなど奇妙な言動を繰り返し、理由のわからない両親は当惑する。周囲の心配などどこ吹く風の彼は、ヴェルサイユ条約が調印された後のある晩に……。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)COAL MOVIE LIMITED 2015
(C)COAL MOVIE LIMITED 2015

「シークレット・オブ・モンスター」奇怪な恐ろしさ、美しさが渦巻く、新たなる“恐るべき子供”映画

 哲学者ジャン=ポール・サルトルの短編小説にインスパイアされた本作は、思春期の入り口に差しかかった微妙な年頃の美少年が、ナチスを連想させる独裁国家のリーダーへと変貌していく物語。何とも好奇心をそそる内容だが、いわゆるドラマやプロットのひねりに妙味があるわけではない。その反面、元ウォーカー・ブラザーズのスコット・ウォーカーが手がけた「序曲」が異様な迫力をもって鳴り響く映像世界は、冒頭から観る者の胸騒ぎを誘ってやまない。「ファニーゲームU.S.A.」「マーサ、あるいはマーシー・メイ」などのアメリカの若手俳優ブラディ・コーベットがヨーロッパに渡り、ベレニス・ベジョ、ロバート・パティンソンらの豪華キャストを得て完成させた監督デビュー作だ。

 1918年、ヴェルサイユ条約の締結交渉のためにフランス郊外の古めかしい屋敷に滞在するアメリカ政府高官の息子が、教会で投石騒ぎを起こすなどの反抗的な言動を連発し、両親や神の教えへの不信を膨らませていく。話はほぼこれだけで、過激なストーリー展開を期待してはいけない。映画史上における過去の“恐るべき子供たち”、例えば「悪い種子」の少女ローダ、「悪を呼ぶ少年」の双子ナイルズとホランドらの悪行のほうがはるかに罪深いはずだ。

 それなのに本作はとてつもなく恐ろしい。35ミリフィルムを採用した映像の陰影の豊かさ、屋敷の内外を虚ろにさまようカメラワーク、そして少年の精神的混乱とシンクロするように不安をかき立てる音楽。もしやこれは幽霊が出現しないゴシック・ホラーなのではないかと形容したくなるほど、画面の隅々にまで高濃度の不穏なムードが充満し、視聴覚を絶えず刺激してくる暗い魅惑にゾクゾクせずにいられない。美しき子役のトム・スウィートもまた全編にわたって謎めき続け、この世で独りぼっちになるにつれて純真さを喪失し、内に邪心を芽生えさせていく少年の変容を危うげに体現する。

 ロバート・パティンソンのひとり2役など、未来の独裁者となる少年の複雑な心理を読み解くヒントはいくつかちりばめられているが、やはり本作の主眼はそこにはない。むしろ精緻な様式美に貫かれたアート映画とも言えるヴィジュアルが、不意にぐにゃりと歪む奇怪な瞬間を見逃してはならない。少年がベッドで悪夢にうなされるシーンでは時空を超えたシュールなイメージが渦巻き、少年が田舎道を散歩するシーンでは唐突に“正体不明の視線”との切り返しショットが挿入される。理屈では何が何だかわからない。そんなこちらの困惑などお構いなしに、不条理なまでに得体の知れない恐ろしさ、美しさが押し寄せてくる異形の怪作の誕生である。(高橋諭治)

映画.com(外部リンク)

2016年11月17日 更新

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