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幸せなひとりぼっち (2015)

EN MAN SOM HETER OVE/A MAN CALLED OVE

監督
ハンネス・ホルム
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4.19 / 評価:1235件

「おじいちゃん」に凝縮される大切なこと

  • TとM さん
  • 2020年6月7日 20時39分
  • 役立ち度 14
    • 総合評価
    • ★★★★★

突然だが、私は「おじいちゃん映画」が好きだ。おじいちゃんが主役の映画のことだ。
何故かはわからない。子どもの頃、いつもおじいちゃんの隣でご飯を食べていたからかもしれない。
「おじいちゃん」というのは、何をやるにしても独自のスタイルを持っている。そりゃそうだ、長らくそうやって生きてきたんだから。
その彼独自のスタイルがカッコ良かったり、可愛かったり、滑稽だったり、腹立たしかったりする。
おじいちゃんとは、とにかく魅力的な存在なのだ。
「幸せなひとりぼっち」のオーヴェも、もれなくそんな「俺スタイル」で生きているおじいちゃんである。

オーヴェの「俺スタイル」はとにかく厳格。○○禁止、の多いこと!敷地内車通り抜け禁止、犬の散歩禁止、門扉開放厳禁、ゴミ出しルールの徹底…。
ルールを守らぬ無法者の愚痴を亡き妻の墓前でぼやき、妻の元へ旅立とうとするオーヴェだが、隣家に越してきたパルヴァネたちの転居を手伝うことに。
それも車のトラブルがきっかけである。
放っときゃいいのに、わざわざ自殺を思いとどまって口出しするのである。
うーん、愛すべきおじいちゃんっぷり!

何度か試みる自殺だが、常に人生のヒヨッコどもの面倒をみるハメになって中止。
オーヴェが強く死を意識した時、亡き妻との思い出が走馬灯がわりに回想される演出も良い。
不器用ながらにコツコツ努力し、不幸に見舞われても理不尽な目にあっても、オーヴェは己の信念を曲げない。彼が父から学んだことは、自分が正しいと思った事に邁進することと、大切なものを守ることだからだ。

そんな不器用な自分を心から愛してくれた妻。彼女のように愛してくれる者などもういない。
親友もかつてのようではなくなり、積み上げてきた地域の暮らしも様変わりしてしまった。
頑なな所が災いして、他に親しい人もいない。

思うに、オーヴェは努力家であったがゆえに、何でも克服してきてしまい過ぎたのだ。上手くいかない状況や、お金の無さを工夫と技術でやって来た。
だから、自分の頑張りでは太刀打ち出来ない出来事を受け入れるのが難しかったのだと思う。

そこへ人生に迷うヒヨッコたちが助けを求めて来た。「こんな事も出来ないのか!」と呆れるオーヴェだが、オーヴェ自身は彼らに「人を頼る」事を教えてもらうのである。
自分が頑張り、自分が助け、ひとりぼっちで生きていると思っていたけれど、そこにはオーヴェに助けられ、オーヴェを頼り、オーヴェを気にかけている人たちがいたのだ。
オーヴェは自分が大きなハートを持っていて、みんなに頼られていることに、こんな人生の晩年まで気づいていなかったのである。

思えばオーヴェが地域の決まり事に対してうるさいのも、大切な妻や友人、知り合いを守る為だ。門扉が開いていれば不審者が入ってくるだろう。老人・子ども・障害者は車を避けられないかもしれないし、犬に噛まれたりするかもしれない。
ちょっとした綻びから家や家族を失ったオーヴェにとっては、自由であることより安全であることが大切な人を守るために優先されるべきことだっただけだ。

長らくそのスタイルで生きてきて、長らく他人に煙たがられ、ひとりぼっちだと思っていたオーヴェ。でもその「ひとりぼっち」は愛すべき「ひとりぼっち」であり、みんなにとってオーヴェは「ひとりぼっち」なんかではなかったのである。
だってオーヴェはいつだって、愛する人を思いやる優しい男だったのだから。

不器用でいじらしい、善き「おじいちゃん」映画である。

詳細評価

物語
配役
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