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聖杯たちの騎士 (2015)

KNIGHT OF CUPS

監督
テレンス・マリック
  • みたいムービー 88
  • みたログ 340

2.53 / 評価:238件

ペール・ギュントとタロットカード

  • bakeneko さん
  • 2016年12月27日 8時27分
  • 閲覧数 2927
  • 役立ち度 16
    • 総合評価
    • ★★★★★

圧巻の映像美で映画を魅せる巨匠:テレンス・マリックの最新作で、“ストーリーを削って絵で語る”作劇は一般観客を置いてけぼりにする孤高のレベルまで到達しています。

“一つ一つの映像の凄さは神レベルなんだけれど、お話をもう少し親切に説明するべきじゃないかな?”―と、マリック監督の最近の物語省略傾向の加速に流石に心配になってきた最新作で、
「ツリー・オブ・ライフ」で善男善女の観客を戸惑わせた“映像&音楽で語る”寡黙話術は更にエスカレートして、映像詩の段階に足を踏み入れています。

放蕩男の一代冒険譚で、音楽の授業で誰もが習った「ペール・ギュント」の主人公に、ハリウッドで食いつないでいる脚本家を重ね合わせ、“人生の運命=各種局面”をタロットカードの種類に例えて各章に分割して観せてゆく作劇となっていて、
前妻、現恋人、ゆきずりの愛人…らとの愛の彷徨や、
父親や弟との葛藤と愛憎、
更に、亡くなったもう一人の弟が家族に投げかけた悲劇の波紋
―を独白台詞と映像詩で断片的に語ってゆきます。
映画的には、フェリーニの「甘い生活」や「8 1/2」を基本モチーフにして、タルコフスキーの「鏡」、「惑星ソラリス」やアントニオーニの「さすらい」「情事」、ゴダールの「気狂いピエロ」、アラン・レネの「去年マリエンバードで」などを想起させる作風となっていますが、芸術性よりも静かで内向的な叙情性が全編に流れているのがマリック流だといえます。

そして画面にシンクロしてクラッシックを絶妙に載せていて、
ヴォーン・ウィリアムス:『天路歴程』
 キラール:『Exodus』
 グリーグ:『オーゼの死』
 ペルト:交響曲第4番『ロサンゼルス』
 ペルト:『ミゼレーレ』
 ヴォーン=ウィリアムス:『タリスの主題による幻想曲』
 パッヘルベル:『カノン』
 ドビュッシー:『映像』
 コレッリ:合奏協奏曲第8番『クリスマス協奏曲』
 ショパン:夜想曲第2番
 ベートーヴェン:『合唱』
 ドビュッシー:夜想曲第3曲〈シレーヌ〉
 ペルト:『シルアンの歌』
 ブルッフ:『コル・ニドライ』
 ドビュッシー:『エジプトの女のため』
 グリーグ:『ソルヴェイグの歌』
 グレツキ:『悲歌のシンフォニー』…が映像美と溶け合っています。

ロサンゼルスやラスベガス街や自然が美しく撮られていて、トレードマークの“ブランコ視線”を始めとして低く高く翔び廻る一人称視点映像にも酔わされます。

物語やエピソードは完全型で語られないので、章となったタロットカードが暗示する項目と掛かっている音楽から情報を補完してゆく鑑賞法となっていて、
“(主人公は)よその会社から大手映画会社に引き抜かれてプレッシャー感じているみたい”
“前の奥さんとはまだ繋がっているのね~”
“死んだもう一人の弟が居たのか…”
“新しい彼女が妊娠したのか”
“お父さんは死んだ弟を一番期待していてまだ住んでいた家を処分できなかったんだな…”
等の情報を汲み取りながら、
「コヤニスカッティ」や「光のノスタルジア」の様に、ひとコマごとに展開する超絶映像に惑溺しましょう…

ねたばれ?
1、 ロサンゼルスは日系人の多い街!冒頭の“浴衣で騒ぐ女の子”や“ストリップバーでのスレンダーな娘”が和洋折衷感を出しています。
2、 小学校の音楽の時間には端折っていたけれど、イプセンが書いたオリジナルの「ペール・ギュント」は、とんでもない放蕩児物語です(R-18級♡)

詳細評価

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映像
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