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ヨーヨー・マと旅するシルクロード (2015)

THE MUSIC OF STRANGERS

監督
モーガン・ネヴィル
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4.05 / 評価:61件

苦悩しつつ、奏で続ける異邦人たち

  • chanrinsham さん
  • 2021年4月4日 15時25分
  • 閲覧数 220
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    • 総合評価
    • ★★★★★

原題The Music of Strangersは「面識のない人たちが一緒に奏でる音楽」とも、「メンバー1人1人が故郷を離れて異邦人としての孤独の中で弾き続ける音楽」とも解釈できる。

2000年ごろにヨーヨー・マが世界の伝統音楽奏者をアメリカに集めて結成したシルクロード・アンサンブル。図らずもその直後に911が発生、ムスリムへの偏見が強まる。

シリアのフルート奏者キーナンは、難民キャンプで人が凍え死んでも、誰にも関心を持たれない祖国を思い、涙する。Homeとは?これから行く場所?貢献したいと思う場所?なんだかんだ言って、帰る場所こそがHomeだ。でも帰りたくても帰れない。

イランのケマンチェ奏者ケイハンは、運命に翻弄されながら、静かに耐えて音楽を奏で続ける。シルバーヘアーの知的な佇まいが印象的だが、目には悲しさが漂う。イラン革命で国を離れた後、イラン・イラク戦争が勃発、家族全員をミサイル攻撃で失う。それでも彼は奏で続ける。「安全上の理由」で祖国でのコンサートがドタキャンされ、国のためにやってきたのに、文化を人質に取るような国では演奏しないと公言する。最愛の妻がアメリカに入国を拒否されたため、そしてコロナもあり、2人はイランにとどまっているようだ。

この2人に比べると、他の出演者の悩みは霞んでしまうが、ヨーヨー・マは早熟な優等生だったために、自分は一体何者なのか?と悩みつつ、ブッシュマンのトランスダンスが持つ明確な目的性に衝撃を受け、文化をストップさせないことこそ、自分の使命なのだと考える。

スペインガリシア地方出身のクリスティーナ・パトは、伝統を大胆に解釈しつつ、文化的アイデンティティ探しを続ける。

こうしたプロジェクトには批判がつきもの。伝統音楽を集めたと言っても、伝統を薄めてごちゃ混ぜにしただけだといった批判もあったようだ。その世界のプロにしてみれば、自分たちの音楽を安直に捻じ曲げてごった煮にして…といった複雑な気持ちもあるだろう。

だがこれによって何かが生まれるのであれば、そして楽器や音楽を知る人たちの裾野が広がれば、それだけでも十分だろう。さらに文化どうしがつながれるというメッセージが伝わるのであれば。ここ数年、ナショナリズム、米中対立、人種差別など、皮肉にも彼らの活動の意義は強まるばかりだ。

文化と文化の融合によって生まれる音楽がほとばしるようで、芸術としての価値はよくわからないけど、清々しい。だからこそ、もっと演奏そのものを見たかった気持ちもある。全体としての主張は希望に満ちているが、上記のような一人一人の悩みにかなり時間を割いており、いろいろ考えさせられる反面、湿っぽい後味。また、中国系の奏者の紹介が長いが、梅崎康二郎さんや藤井はるかさんの演奏も見たかった。

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