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キングコング:髑髏島の巨神 (2017)

KONG: SKULL ISLAND

監督
ジョーダン・ヴォート=ロバーツ
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3.66 / 評価:4,935件

やっぱりコングは美女が好き

『キングコング/髑髏島の巨神』の良いところは、2時間弱という上映時間である。2005年のピーター・ジャクソン版のように3時間を超えるのはちょっときつい。ここから前半の髑髏島の場面のみを取り出して、起承転結のある映画に仕上げたのが本作といえるだろう。
僕が思うにエンタテイメント大作は前半とクライマックスに大がかりな見せ場を仕込み、観客が疲れないよう適度なダレ場を入れると2時間くらいの上映時間がちょうどいい。全編にわたってほどよい緊張感が持続し、怪獣映画の歴史に新たな1ページを加える傑作になっていた。

タイトルにあえて髑髏という難しい漢字をもってきたのも好感が持てる。映画にはさまざまなドクロが出てくるので納得である。「スカル・アイランドの秘密」とかだったら、ありきたりで興味を持てなかったかも知れない。
監督はジョーダン・ボート=ロバーツという人で初めて聞く名前だ。1984年生まれの若手だという。2014年の「ゴジラ」でもテレビ中心に仕事をしていたギャレス・エドワーズを起用し、後にスターウォーズの「ローグ・ワン」を任せてヒットを飛ばした。こういう過去のキャリアにとらわれない大胆な若手起用はうらやましい。

映画は1944年、太平洋戦争の場面からスタートする。南方戦線において墜落する戦闘機から脱出したアメリカ兵が、近くに墜落したゼロ戦に乗る日本兵と格闘になる。日本刀を振りかざして殺る気満々の日本兵に組み敷かれて絶体絶命になったところで、いきなり巨大なキングコングが顔を出す。
時代はめぐり、冷戦や核実験など混迷する世界情勢を表す映像にかぶせるようにタイトルが出て、ベトナム戦争末期の1973年まで飛んで本編スタート。ワクワクさせるオープニングである。アメリカではひとつの戦いが終わったが、明るみに出なかった知られざる戦いが始まろうとしているのだ。

73年といえば日本の映画界では「ポセイドン・アドベンチャー」「仁義なき戦い」が公開され、年末には「燃えよドラゴン」「日本沈没」が大ブームを起こした。石油ショックが起こり、アメリカがベトナム戦争への介入を諦めた年でもある。また前年にはグアム島で横井庄一さんが発見され、第二次世界大戦の傷跡が色濃く残っている時代でもあったのだ。映画は70年代前半の屈折した雰囲気をうまく再現していたと思う。

コング以外のキャラクターで美味しいポジションの人物が3人いる。一人目は戦場カメラマンのメイリン(ブリー・ラーソン)で、本作のヒロインであると共に実質上の主役と言っていいだろう。70年代に活躍していた女優キャンディス・バーゲンを思い出す。敵意のないコングと見つめ合うシーンが2回あり、クライマックスではコングに危ういところを救われる。やはりキングコングの映画には、コングが掌に美女を乗せる場面が欠かせないのだろう。
美女としてはもう一人中国系(ジン・ティエン)が登場するが、足手まといではなくチームの和を乱す存在でもないが大きな見せ場は与えられず、最後には若い黒人科学者(コリー・ホーキンズ)といいムードになったりする。最近の大作でやたら目立つ「好感の持てる中国人キャラ」の典型だ。

博愛主義者のメイリンと対をなすのが好戦的なコンラッド大佐(サミュエル・L・ジャクソン)で、やはりコングと見つめ合うシーンがある。冒頭のベトナムから撤退する場面では名残惜しそうな様子を見せ「もっと戦場で大暴れしたかった」感がありありだ。コングとの戦闘は、ある意味彼の願望をかなえてくれたのかも知れない。こういうキャラもキングコングの映画には必要だ。
出航前にメイリンに向かって「あなたの仕事は尊敬するが、アメリカのためにはならない」と言う。これはナパーム弾で火傷した少女が泣いている有名な写真が世論を動かし、アメリカのベトナム撤退を早めたエピソードを意識しているのだろう。クライマックスではコンラッドが仕掛けたナパームでコングが深手を負うが、ベトナム戦争の再現のようで胸の痛む場面である。

もう一人欠かせないのが太平洋戦争の未帰還兵マーロウ(ジョン・C・ライリー)で、本作のキーパーソンである。冒頭で格闘していた日本兵イカリ・グンペイと、髑髏島で生き残るために協力し親友になった。イカリの遺品である日本刀が大活躍(剣術の指南を受けていたのだ)、凶暴な翼竜をぶった斬りコングの強敵スカル・クローラーにまで一太刀浴びせるのだから驚きだ。決めの場面で「不名誉よりも死を」という日本語を呟くのも泣かせるではないか。
マーロウが髑髏島に上陸した調査隊に向かって「戦争は勝ったのか?」と聞き「どの戦争だ?」と聞き返される場面は、第二次世界大戦後も戦争を続けるアメリカを皮肉ったものと言えそうだ。すっかりコング以外の怪獣や戦闘について書く文字数がなくなってしまったが、これについてはぜひスクリーンで観て下さいと言うほかない。

詳細評価

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