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たかが世界の終わり (2016)

JUSTE LA FIN DU MONDE/IT'S ONLY THE END OF THE WORLD

監督
グザヴィエ・ドラン
  • みたいムービー 239
  • みたログ 842

3.09 / 評価:600件

実にカンヌで賞をとりそうな映画

  • gal***** さん
  • 2018年9月7日 2時04分
  • 閲覧数 1026
  • 役立ち度 4
    • 総合評価
    • ★★★★★

一言で言うと 実にカンヌで賞をとりそうな映画といった作品。
良い意味でも、悪い意味でもこの一言に限る、

12年間顔を合わせなかった家族。その背景や理由も語られない。母親がゲイだと語ったのも、ゲイ地区にいたためだと誤解させるような発言とシーンが混ぜられており、とにかく訳がわからなくなる。
何が原因で死ぬのかも、むしろ本当に死ぬのかもよくわからないまま話は進んで行く。

もちろん、ヒントはあちこちに散りばめられているが、明確な答えがないため、とにかく分かりづらい。(ジョリクールをピエールといったのは、ピエール・ジルからかな…)
キスを拒む理由や、兄嫁の態度を見ればHIVなのは予測はつくし、兄にイライラの理由は弟の死を悟ってなのはなんとなくわかる。
けれど、家族全員の心情や考え方は、とにかく行動から察して行くしかない。そういう点では言葉ではなくそれらを演技で伝えなければならない俳優たちに求められる演技力はとても高いとも言えるし、そのハードルを飛び越えた俳優達はお見事といえる。

とにかく開始から終わりまで時限爆弾を抱えながら、さっさと用件を済ませろよ!っとイライラしがちな映画だが、実際に12年間も帰ってこず、兄の結婚式にすら顔を出さないような家族が実家に帰ってくるなんて、理由は察することができる。
それぞれが、それぞれの立場で家族を演じながら、その爆弾の投下を待たなければいけないし、探りを入れ続けなければいけない。

確かに嫌な奴の集まりのように感じるような家族だが、世の中の家族は大抵自分の嫌な部分もさらけ出しながら関わっているのだから、こうなっても仕方ないといえば仕方ない。居た堪れない兄嫁の立場だが、兄嫁は血の繋がらない他人という立場だからこそ、冷静にそして時に非情に相手を見ることができる。
実際、兄と妹、母親の喧嘩に挟まれている時の兄嫁は比較的穏やかな顔をしている。つまり、あの家族のやりとりはあれが普通で、爆弾を抱えた次男と関わる時間こそがあの家族にとっても異質な時間なのは明白だ。

長男はおそらく、そういった点で1番臆病なのだろう。次男が無責任に落として行く爆弾が、12年間保っていた家族の関係に大きな変化をもたらすことは理解している。次男は身勝手に家族に幻想を残すために帰って来たが、その身勝手さは家族の存在を必要以上に振り回し、変化させるのは明白だ。
それを悟っているから、とにかく弟が家族という幻想に口を滑らせる前に、爆弾が破裂しないように何度も釘をさす。不器用だし身勝手だが、無駄に憎まれ役を買う羽目になる。もしかしたら帰りの車内で話を聞いていたのかもしれないしね…。
どちらにしても次男が死んだあと、母親と妹が彼のことをどう思うか…。2人ともそれとなく悟ってるからこそ、打ち明けてほしい気持ちもあるだろうし。けれど、誰もそんな変化を受け入れる余裕などないのも事実だ…奇跡や、試練を乗り越える急成長など簡単には訪れない。

とにもかくにも、そういった面は無駄の多い会話や、登場人物の顔から推測していくしかない。
そのため、カメラはアップが多く、気だるい会話や役者の表情が延々と続く作品になる。
この空気や、作品性に耐えれない人には正直辛い作品だ。 皆、次男からの真相を伝えられた家族の変化、そこに対する何かを求めて映画を見に来た訳だし。

そして結論はタイトルに集約されている。彼がそれはとても大きく、とてつもない事態に思え、残された家族も含めて自分の存在に対して使命感や責任感を生んだ自分という世界の終わり。それは時間に気づいた小鳥が飛び回り、あちこちぶつかり、苦しみもがき最後を迎えたとしても、世界は何も変わらない、そして自身の家族達も同様にある意味では何も変わらない。
ちっぽけでどうでもいい「たかが世界の終わり」でしかなかない。

実際、自分の世界の大部分をしめるとと信じていた恋人の死でさえ、タバコ1本の間に整理がついて、すぐに目の前の家族という問題に頭が切り替えられてしまうのだ。自分という人間の世界の終わりなど、所詮 家族にも家にも自分の求めるような「救い」や「懺悔」をもたらすような手札でもない、「たかが」なのだ。

重苦しく、モヤっとする作品ではあるが、テーマをきちんと描き切った、優秀な作品であるともいえる。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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