ここから本文です

哭声/コクソン (2016)

THE WAILING

監督
ナ・ホンジン
  • みたいムービー 1,055
  • みたログ 2,105

3.41 / 評価:1120件

解説

『アシュラ』などのクァク・ドウォンが主演を飾り、『チェイサー』『哀しき獣』などのナ・ホンジン監督と組んで放つ異色サスペンス。とある田舎の村に一人のよそ者が出現したのをきっかけに凶悪な殺人事件が頻発し、人々が混沌の中に突き落とされるさまを描く。『華麗なるリベンジ』などのファン・ジョンミンをはじめ、日本からベテラン國村隼が参加。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

警察官ジョング(クァク・ドウォン)が妻と娘と暮らす平和な村に正体不明のよそ者(國村隼)が住み着いて以来、住人たちは彼のうわさをささやいていた。やがて、村で突然村人が自分の家族を手にかける事件が発生する。犯人には、濁った目と湿疹でただれた肌という共通点があり……。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION
(C)2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION

「哭声 コクソン」得体の知れない不安が極限の恐怖へと変わりゆく、血生臭くも巧妙なオカルト心理劇

 「チェイサー」「哀しき獣」で比類なき剛腕ぶりを発揮した韓国のナ・ホンジン監督が放つこの新作は、スリラーやホラーに分類されるべき作品だが、2時間36分という本編の長さからして著しくジャンルの枠をはみ出している。冒頭に新約聖書の引用が示されることからも、これが一種のオカルト映画であることは明白だが、過去にキリスト教圏で作られたそれらの中から類似作品を挙げるのは難しい。とにかく“得体の知れない”恐怖映画なのである。

 とある田舎で、ごく普通に暮らしていた村人が自分の家族を殺害する事件が続発する。犯人はあっさり現場で拘束されるが、彼らはすでに正気を失っており、家族を殺す動機も見当たらない。しかしいくら不可解でも、こんな惨劇が小さなコミュニティで立て続けに起これば“連続性”を疑わざるをえない。では、災いをもたらす源はいったい何なのか。新種のウイルスか、毒キノコか、悪霊か、それとも悪魔なのか。そこで浮上してくるのが、近くの森の一軒家に住みついた日本人(國村隼)の存在。村に流れ着いた理由も素性も一切不明のこの日本人をめぐって、謎めいた状況はますます謎めき、クライマックスに至っても“解かれる”気配がうかがえない。

 あの日本人が怪しい。村人の胸中に芽生えたその疑念は噂となって人から人へと広まり、放置できない不安へと格上げされ、ついには極限の恐怖に達していく。要するに、本作はオカルト仕立ての異常心理劇だ。“得体の知れない”何かによって信仰や家族の絆を脅かされた者たちが、慌てふためいて我を見失い、心のよりどころを取り戻そうとさらに深みにはまっていく様が、驚くほどじわりじわりと段階を踏んだ巧妙なサスペンス演出で描かれる。謎解きの手がかりなどの特権を与えられない私たち観客も村人たち同様、ジャンルの定型に収まらない不条理恐怖に巻き込まれるはめになるのだ。

 ホラー映画における悪夢のシーンは、登場人物がはっと目覚めることで現実と切り離され、単なるショック描写のサービスにとどまる場合がほとんどだが、本作は悪夢と現実の境目がない。寝ても覚めても恐ろしいとはまさにこれ。しかも安易にCGで超常現象を映像化したりしない本作は、“得体の知れない”不安や恐怖がいちいち血生臭い具体性をもって容赦なく迫ってくる。例えば中盤に出現するゾンビがそうだ。それに出くわした瞬間、村人たちと一緒にこちらまで「ギャーッ!」と叫びたくなる衝撃シーンをぜひご覧あれ。(高橋諭治)

映画.com(外部リンク)

2017年3月9日 更新

本文はここま>
でです このページの先頭へ