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ムーンライト (2016)

MOONLIGHT

監督
バリー・ジェンキンズ
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3.40 / 評価:3129件

解説

ブラッド・ピットが製作陣に名を連ね、さまざまな映画祭・映画賞で高評価を得たドラマ。マイアミの貧困地域に生きる少年が成長する姿を、三つの時代に分けて追う。監督は、短編やテレビシリーズを中心に活躍してきたバリー・ジェンキンズ。『マンデラ 自由への長い道』などのナオミ・ハリス、『グローリー/明日への行進』などのアンドレ・ホランドらが出演。逆境の中で懸命に生きる主人公に胸を打たれる。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

マイアミの貧困地域で、麻薬を常習している母親ポーラ(ナオミ・ハリス)と暮らす少年シャロン(アレックス・R・ヒバート)。学校ではチビと呼ばれていじめられ、母親からは育児放棄されている彼は、何かと面倒を見てくれる麻薬ディーラーのホアン(マハーシャラ・アリ)とその妻、唯一の友人のケビンだけが心の支えだった。そんな中、シャロンは同性のケビンを好きになる。そのことを誰にも言わなかったが……。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2016 A24 Distribution, LLC
(C)2016 A24 Distribution, LLC

「ムーンライト」少年の成長譚から、甘酸っぱく狂おしいメロドラマへ。映画は見事な大変身を遂げる

 苦く、そして美しい。アカデミー賞授賞式のまさかの発表間違い騒動でとたんに有名になった感はあるが、作品賞に相応しい内容とクオリティを備えている。が、ちょっとだけ事前にお伝えしたいのは、おそらく、多くの人が思い浮かべる「アカデミー賞受賞の名作!」とはちょっと違う、ということだ。

 本作は、マイアミの貧しい地区で暮らす少年シャロンの姿を、少年期、高校時代、そして成人してからの3つの時代を通して描いている(外見の違う3人の役者が同じ“眼”を持って見えるのが素晴らしい)。マイアミ=陽光輝く享楽的な街という従来のイメージは通用せず、世間から忘れられ、時間すらも止まったような気だるい郊外の姿が切り取られていく。

 冒頭に登場するのは、麻薬ディーラーのフアン(マハーシャラ・アリがアカデミー賞助演男優賞に輝いた)。町の顔役を気取ったチンピラだが、情に厚く、いじめっ子に追いかけられているシャロンに救いの手を差し伸べる。

 普通なら、フアンとシャロンの疑似親子的な交流だけで一本の映画が仕上がってしまうだろう。実際、最初のパートは警戒心に包まれたシャロンと、その心を解きほぐすフアン、ドラッグ中毒でフアンに敵意を抱くシャロンの母親を中心に展開していく。

 ところが、だ。ストリートで生きる薄幸な少年の成長譚というわかりやすい構図は続く第二章で簡単に覆される。「ムーンライト」は「こんな映画ですよね」という余談を一切許さず、暴力的なまでの強引さで時代をすっ飛ばし、観客を次の章に放り込む。われわれはシャロンたちの語られない空白を想像で埋めながら、提示された新しい局面を見つめ続けるしかない。

 やがて物語は、ストリートの現実から同性愛の葛藤と言うテーマにシフトしていく。いや、シフトしていくというのはおかしい。どんなに繊細でも凄まなければ生きていけないストリートの掟が、シャロンの中で明確になっていく同性愛という自意識を抑圧し続ける。2つの要素は密接に絡み合っているのだ。

 そして第3章を終える頃には、映画は冒頭とはまったく別のナニカに衣替えを果たしている。筆者が抱いた印象では、これはケイト・ブランシェット&ルーニー・マーラの「キャロル」を彷彿とさせるメロドラマであり、ウォン・カーウァイ作品のような耽美でセンチメンタルなラブストーリーだ。映っているのが黒人のオッサンでも、甘酸っぱくて狂おしい。蛹から蝶が孵化するかのごときみごとな大変身だと思う。(村山章)

映画.com(外部リンク)

2017年3月23日 更新

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