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スパイダーマン:ホームカミング
2017年8月11日公開

スパイダーマン:ホームカミング

SPIDER-MAN: HOMECOMING

1332017年8月11日公開

tya********

4.0

「親愛なる隣人」の誕生を完璧に描いた一本

 スパイダーマンがマーベル(ホーム)に戻って(カミング)きた!  長らく映画化権をソニーに保持されてきたMARVELの看板キャラクター=スパイダーマンがついにMCUに合流することになる!というのは『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』でのお話。今作『スパイダーマン:ホームカミング』では、まだ新人だった『シビル・ウォー』 の後、スパイダーマンがどのように、あるべきヒーロー像に目覚めていくかを描く作品になります。  (*単体映画として見られる一方、特に『アイアンマン』シリーズのファンにとってお土産的なサプライズがあるのでご注意下さい)  さて、この『スパイダーマン』、シリーズ映画化されるのは今回で3度目、彼が人気ヒーローだからこそスパイダーマン映画化は成功と失敗の歴史。そして、その歴史に新たに名を刻む今作のスパイダーマン=ピーター・パーカーは15歳、彼は超能力を授かった超人である一方、まで青春真っ盛りの高校生であります。実に今作『スパイダーマン:ホームカミング』のピーターとクラスメイトの集合ポスターは、青春映画の傑作『ブレックファスト・クラブ』をオマージュしたものでしたが、今作はヒーロー誕生譚であると同時に、まさに「ジョン・ヒューズ監督が『スパイダーマン』を撮ったら、こうなる」といった具合の学園青春モノとしての色合いが強くなっていました。    また、『シビル・ウォー』 にて、スパイダーマンが「クイーンズ出身」と言うと、キャプテン・アメリカが「僕はブルックリンだ」と答えるシーンが記念碑的な瞬間として語られてきましたが、この『スパイダーマン:ホームカミング』では、現行ハリウッドのホワイト・ウォッシュに反発するかのように多人種に富んでいるのが素晴らしい。  ピーターのクラスメイトで彼をイジるスネ夫的なフラッシュはヒスパニック系、ピーターの行きつけのお店の店主はイタリア系、加えてピーターが中国系の店主が切り盛りする中華料理屋で食事をするシーンもある。これはスパイダーマンの故郷クイーンズは、移民の街であること以上に、ピーター・パーカーという「通名」から分かる通りスパイダーマン=ピーター・パーカー自身もユダヤ系移民の血を引き継いでいます。これは、スパイダーマンの生みの親であるスタン・リーが、自身のルーマニア系ユダヤ人の血をピーター・パーカーというキャラクターに反映したというのが専らの通説になります。  以前の『スパイダーマン』シリーズでは描写不足だった「移民」、「多人種」というテーマが今作で深く描いたというのは、とても意義深いことであると思います。  そして、多人種、移民の街=クイーンズを舞台にしておきながら今作の悪役となるバルチャーは元々、建設会社の社長というブルーカラーを率いるボス。彼らが移民に反発して、反グローバリズム、トランプ大統領誕生に繋がったという現実のアメリカと重ねて見ても興味深い点。  ハゲタカに扮した「スーツ」を着て武器商売をする社長のバルチャーは、「スーツ」を着て戦う元武器商人のアイアンマン=トニー・スタークの鏡写りです。今作においてトニー・スタークは、両親を亡くしたピーターの父親代わりの役割を担っていますが、ピーターにとって悪役バルチャーを倒す過程は父親のダークサイドを超える過程。つまり、この『ホームカミング』は「父親殺し」物語として、少年の成長譚を描き切っています。  監督のジョン・ワッツはYouTuberからホラー・プリンス=イーライ・ロス監督に見出され映画監督になった人物。今作は、そんな次世代の監督ジョン・ワッツのベストワークと呼べる出来でした。監督の前作『コップ・カー』では、悪ガキと怖い警官(大人)との対決で展開するスリラーでしたが、今作『ホームカミング』も、驚愕のストーリー展開から一気に悪ガキ(ピーター)と怖い大人との対決の様相が濃くなっていきます。  この『ホームカミング』は「ホームカミング」以上でも以下でもないという事。それはスパイダーマンの「帰郷」という意味の「ホームカミング」であり、今作のツイストは、学校行事「ホームカミング」で「一番怖いのは誘う相手の父親だよね」という事を分かりやすく映像化しているものとも言えます。  今作『ホームカミング』は、スパイダーマンを「親愛なる隣人」として、勇気を持ってミニマムなローカルヒーロー、良い意味で「地に足が着いた」ヒーローとして描いた作品として過去作と比較しても飛び抜けて素晴らしいスパイダーマン・オリジン映画でした。

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