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夜は短し歩けよ乙女 (2017)

THE NIGHT IS SHORT, WALK ON GIRL

監督
湯浅政明
  • みたいムービー 350
  • みたログ 2,293

3.32 / 評価:1848件

著者の感性に合ってない気がします。

  • tonikakuwakagawakaranai さん
  • 2017年4月8日 2時52分
  • 閲覧数 6280
  • 役立ち度 43
    • 総合評価
    • ★★★★★

著者のファンです。

結論からいうと、原作ファンにとっては酷い出来だと思います。

ただ、湯浅正明監督以下、スタッフさんの頑張りは伝わりますし、
原作へのリスペクトも感じます。
彼らは与えられた職務を忠実にこなしております。
映画は時間と空間に奥行きを与えてくれますし、児童文学的な要素もしっかり調理されておりました。

ではなぜ、酷いと感じたのか、それは製作委員会やプロデューサーの意思決定によるものだと思います。

元々、原作の小説は、取っつきにくさと取っつきやすさが奇跡的なバランスをもって
成り立った作品です。例えて言うならば、汚物に物凄く可愛らしいフリルやリボンをつけて、
綺麗に見せてる作品なのです。だから、映画を作るとすれば、このバランス感覚がつかめる人間でなければなりません。
また、著者の作品は、マジックリアリズム的と言われるように、写実的な世界にアニメ的なキャラや物語を混ぜ込んだものが多いです。要はセルアニメ的で、背景はリアルまたはリアル+aでありながら、人物は非人間的で単純な線で表現されます。
だから、背景は美術はフォトリアル程度が適切なのです。

湯浅監督は、才能ある方ですが、同時にクセの強い作家さんです。
本当に本作で監督を務めるべき人材だったのでしょうか。
湯浅監督にはもっと、監督の長所を生かせる作品を依頼すべきだったのではないでしょうか。
本作含めて、著者の作品は優秀なクリエイターが熱意を持ってアニメ化しておりますが、
どの方も著者の感性とズレがあるような印象を受けます。
クセのある方を採用するのであれば、プロデューサーはクセを生かしつつ観客を引き込めるように
監督と喧嘩するべきだったのではないでしょうか。
さらに、ここまでストーリーを改変するのでしたら、監督の長所を生かして、
もっとめちゃクチャにしてもよかったのではないでしょうか。
本作のようなポテンシャルの高い作品をアニメ化するのであれば、
製作委員会はもっとヒトモノカネを投入すべきだったのではないでしょうか。

本作は、著者の作品の中でも映像化が難しい作品です。
オムニバス形式の構成であり、お話も自体も大変シンプルです。
言ってしまえば、森見さんの多くの著作は人物や物語よりも世界観(風情)を
重視しており、著作の構成も後半までは世界観(風情)に特化している印象です。
例えば、有頂天家族の第二部の原案のひとつ「有馬騒動」では、
キャラクターや 物語よりも、温泉街の風情の描写が重要視されております。
そういった風情の中で愛嬌のあるキャラと物語が後から展開されるのです。
だから、映画でも一シーンごと時間をおいて、風情を堪能させる必要があります。

加えて、「京都」という文字は大変便利で、この2文字が著者の文章に掲載されるだけで、
読者は森見的な京都の風情をイメージすることができます。でも映画はそれを具体化しなければ、伝わりません。
だから安直ではあるものの、京都の夜の街並みをもっと時間をかけて描写するべきだったのではないのでしょうか。
個人的には本作は著者が構築した箱庭世界を堪能するためのツアー小説で、
登場人物も物語もツアー客を案内する、旅先案内人に過ぎないと考えております。
だから、もっと時間を使って作品世界の空気感や風情を感じさせなければなりません。

そういった映像化に向かない原作を映画化するのであれば、石橋を叩いて壊しまくるぐらいの慎重さを持って
取り組むべきだったのではないのでしょうか。
例えばこの作品は、一般公開前に若い観客にモニタリングをしたのでしょうか。
してたらこんな作品にはなってなかったでしょう。
お笑い要素も始終滑ってました。
小説の笑い要素をそのまま映像化しないで、
矢口監督のような映像で笑いを取るべきだったのではないでしょうか。
文語調のセリフも映画では必要だったのでしょうか。
せっかく映像化するのであれば、映像化に適したものに作り変えるべきです。

とにかく、原作ファンは視聴をオススメできません。
特に本当に本作に入れ込んだ人間は避けた方が無難です。
あなたが活字から想像した世界の方がはるかに豊かで多彩な色に満ちていると思います。
それを超えるような作品に本作は出来上がってないです。

暗澹たる心持ちで劇場を後にして、帰りの電車内で銀幕編の文章を読んでみました。
7ページほどの書簡形式の文章でしたが、私にとってはこれだけで十分でした。

もし今後、原作の映像化が行われるのであれば、実写で見てみたいです。

詳細評価

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