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TAP THE LAST SHOW
2017年6月17日公開

TAP THE LAST SHOW

1332017年6月17日公開

りゃんひさ

4.0

人間とは思えない体技に魅せられた

水谷豊初監督作品『TAP THE LAST SHOW』、ロードショウで鑑賞しました。 6月中旬に公開されてからひと月以上も経ち、見逃したかなと思っていましたが、渋谷の劇場でロングラン上映中。 ならば、ということで数少ない上映時間にあわせて出かけた次第。 さて、映画。 かつての天才タップダンサー・渡(水谷豊)も30年前の事故がきっかけでいまは酒浸りの日々。 旧知の劇場主・毛利(岸部一徳)がラスト公演に、かつての栄光もう一度とばかりに、タップダンスのステージを企画し、渡を演出家に担ぎ出した。 気乗りしない渡であったが、オーデションを重ねるうちに、かつての熱情に再び火が付いた・・・ といったところから始まる物語で、『コーラスライン』を思わせるようなスタイル。 若い観客には、『セッション』みたいな、と言う方がいいのかもしれないけれど。 とにかく、本格的なタップダンス映画で、そのダンスシーンに酔えばいい。 ミュージカル映画とジャッキー・チェンをこよなく愛する知り合いの映画ファン女史が言ったことだが、「どちらにも共通するのは、人間とは思えないほどの体技を魅せてくれること」というのを思いだした。 そしてまた、無声映画の時代の巨匠が言った「一ヌケ、二スジ、三ドウサ」という言葉も思い出したのだが、そのうち、一と三については十分すぎるほど満足できる。 (ヌケは画面の映り具合、スジはストーリー、ドウサはアクション(役者の動き)のこと) ほんとにダンスシーンが素晴らしい。 それも、謳い文句にあるラストのショウだけでなく、前半のオーデションシーンがとにかく素晴らしい。 ステッキを振ってカウントを取る渡。 ステージに並んだ数十人のダンサーたち。 渡が次々と口にするステップを踏み、それに応えるダンサーたち。 しかし、体力も技術も限界があり、渡のカウントについていけなくなり、次々と倒れていく・・・ このシーンが素晴らしい。 踊るダンサーたちもそうだが、鬼の形相でステッキを振り、しまいには折ってしまう渡を演じる水谷の熱情も伝わってくる。 これがあるからこそ、ラストのショウのシーンが活きてくる。 ただし、二スジには難ありで、合間合間に描かれるダンサーたちのバックグラウンドストーリーが陳腐。 できれば、劇場の外は描かず、オーディションとレッスンだけで彼らの背景まで描けるほどの脚本であれば、より素晴らしかったのだが、これはこれで困難なのだろう。 もうひとつは、ラストショウのために金策をしている劇場主が倒れた後の資金繰り問題が、おざなりなのは気になった。 ダンサーの背景よりも、こちらの方が気にかかって仕方がなかった。 さらにもうひとつ、時代設定に無理がある。 水谷豊40年越しの構想ということだが、40年前(もしくはバブル崩壊直後ぐらい)ならまだ説得力があったかもしれないが、現代、タップダンスでショウを行おうというのは、やはり無理無理感が大きい。 とはいえ、人間とは思えない体技に魅せられたので、それだけで十分満足なのだけれど。

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