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マンチェスター・バイ・ザ・シー
2017年5月13日公開

マンチェスター・バイ・ザ・シー

MANCHESTER BY THE SEA

1372017年5月13日公開

ara********

4.0

ネタバレ不器用さに塗り固められた光

皆さんは自分の人生うまくいっているでしょうか? 私自身はあまりうまくいっていません。私の生まれつきの気質からくる不甲斐なさもあるのでしょうが、これまで生きてきた中で経験した喜怒哀楽様々なことが私自身を塗り固め、私自身を固定化してしまった。このプロセスはこの世に生を受けた殆どの人が経験することです。 これにより家族仲も良好、順風満帆な人もいれば、私のように不甲斐なく、家族とぎこちない関係になってしまう人もいるでしょう。その中で幸せそうな他者を見て嫉妬に狂う人もいるでしょう。家族を殺してしまいたいほどの憎しみを抱いてしまう人も中にはいるでしょう。 しかし私は少しでも現状を「マシ」にしていきたいという気持ちは少なからず持っています。しかしどうすればいいかわからない。これまで私自身を塗り固めてきたものはあまりにも絶対的なものであり。急にそれを壊そうと思ったらきっと私自身も壊れてしまう。 どうしよう…そう思ったときにケイシーアフレック演じるリーに出会いました。 彼もまた自分の辛い過去に塗り固められた不器用で不愛想で粗暴な男。冒頭のバーでケンカを売るシーンは本当しょうもないヤツだなと思いました。 しかし映画を見ていく中で、彼の死んだ魚のような目の中に一筋の光が見えたような気がしたのです。思春期でちょっとワガママな甥のパトリックを半ば邪険に扱いつつも、後見人らしく寄り添い見守る姿は不格好ではありますが、確かに甥を思いやる気持ちを感じました。 悲劇的な事故で離別することになった元妻ランディと再会したとき。感情があふれ出し涙を流すランディを不器用に宥める姿に過去の贖罪とまだ冷めることのない愛情を感じました。 過去は変えることはできない、過去に塗り固められた自分も簡単に変えることはできない。ただ心の奥に微かな光があればそういったものすべて背負って生きていける。リーの厭世的な背中がそう言っているような気がしました。 この物語はドラマティックな展開や派手な演出があるわけでもなければ、耳ざわりのいい言葉で観客の涙を誘うようなものでもありません。人によっては映画として面白みに欠ける部分もあるかもしれません。 ただ私たちが送っていく何気ない日常に少しの勇気を与えてくれる、そんな物語だと思いました。

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