レビュー一覧に戻る
武曲 MUKOKU
2017年6月3日公開

武曲 MUKOKU

1252017年6月3日公開

yas********

4.0

映像美としての武曲

原作をリスペクトしつつ、映像作品ならではの特色を色濃く出した姿勢が好ましいと思いました。 「さんさっぽう(三殺法)」という言葉も、兵法を吟じるのも、小説なら目で漢字を見て理解するけれど、映画では音で聴く。羽田が耳慣れない言葉とリズムに惹かれる過程を、追体験するのです。 親殺しの業を糾弾する(ように、矢田部には見えた)仏は、建長寺の、目に塗られた白が強烈な印象の仏像。目で見るからこそのインパクトです。 東国武士のような矢田部と羽田は、運慶の天部像のようです。張りつめた若いしなやかな身体と、鍛え上げた大人の男性の身体。目で見るからこそのインパクトです。 原作からの最も大きな改変である、羽田の洪水のトラウマ。 死の深淵を見て、心ならずとも惹かれてしまった自分に対する恐怖。それが無意識に矢田部に対して「自分を殺してくれ」というオーラを発してしまい、矢田部に父親と同視させて自制心を失わせてしまう。 幻視の水に一瞬たじろぎ、そして恍惚の表情で自ら顔を浸ける羽田のシーンの美しさ。 目で見る、耳で聴く、映画という媒体の効果を十二分に生かした作品だと思います。

閲覧数1,302