レビュー一覧に戻る
スモーク・アンド・ミラーズ 1000の顔を持つスパイ
2017年2月25日公開

スモーク・アンド・ミラーズ 1000の顔を持つスパイ

EL HOMBRE DE LAS MIL CARAS/SMOKE & MIRRORS/THE MAN WITH THOUSAND FACES

1232017年2月25日公開

bakeneko

5.0

ネタバレ本物のスパイは地味な仕掛けで勝負する…

スペインの犯罪史に残る大金横領事件の主犯であるパエサにインタビューしたマヌエル・セルドンの原作“Paesa: El espía de las mil caras(パエサ:千の顔を持つスパイ)“の映画化作品で、右派政権が倒れて混迷していたスペインで、長く治安警察のトップだったルイス・ロルダン(Luis Roldán)が公金を横領して国外に逃亡し再逮捕された際に、パエサが仕掛けた大金獲得の詳細が、パリ、シンガポール、タイ…と国際的な展開で描かれてゆきます。 実際に起こった事件を過度の娯楽色を排して実録風に淡々と描きあげた作品で、「シシリーの黒い霧」、「黒い砂漠」、「法王の銀行家 ロベルト・カルヴィ暗殺事件」などの様に、事件を良く知らない日本人観客は一生懸命“何が起こっているか?&この登場人物は誰?”…と物語に必死で着いてゆく作品となっています(アメリカ映画の様な、判り易い正邪の区別&計画の台詞説明&派手なドンパチ…が無いので自分の頭をフル回転させましょう!) そして、ETA(バスク独立を目指すテロ組織)に対する謀略&諜報活動に勤しんできた主人公が、独立運動の沈静化によって“用済み”として、国家に裏切られて財産&権限を取り上げられた為に、それまでに培った技術と人脈を使って活動したことも提示されて、 同じく解雇された元情報部将校が起こしたアルゼンチンを揺るがした連続誘拐事件を描いた「エル・クラン」と同根であることも判ります(スパイを怒らせると恐いのよ!)。 そして、豊富な人脈、何度も何度も念を入れる“資金洗浄”&文書偽造、人心を熟知した心理解析…といった地味な策略が、大胆な亡命や公金横領に必須なことを見せてゆく作品で、ジョン・ル・カレの英国スパイ小説を読んでいる様な、地味で通好みでリアルな情報活動の世界を垣間見ることが出来ます。 プロローグからの時間巻き戻し&終盤までのスローモーな語り口までは丹念な実録描写ですが、ラストの“仕掛けカラクリの説明”からの急転&脱兎の如き着地であっと言わせる作劇となっていますので、しっかり映画についてゆきましょう! (脱線) 1、昔、ミル・マスカラス(Mil Máscaras)っていうメキシコのプロレスラーが居たなあ~、猪木や馬場と戦った放送を観た人は手を挙げて!(入場曲はジグソーの“スカイ・ハイ”♪) 2、本映画のサスペンスフルなテーマ曲って「恐怖の報酬 」(1977年=フリードキン版の方)に似ていません?

閲覧数805