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メットガラ ドレスをまとった美術館
2017年4月15日公開

メットガラ ドレスをまとった美術館

THE FIRST MONDAY IN MAY

912017年4月15日公開

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3.0

美しさはわかりますが……

メットガラ。 ニューヨーク・メトロポリタン美術館で開催されるファッション美術展の様子を追ったドキュメンタリーです。 まずは「ファッションはアートである」と語られていきます。見事な服飾。その概念の奥深さ。我々は思考しながらでなければこの映画を見ることはできないと思います。 ですが、私は「ファッションはアートである」ということを、どう捉えるべきか、見れば見るほどわからなくなってしまいました。この映画の趣旨がどこか自己顕示的だからです。 まずですね、「ファッションはアートである」と語るその人となりといいますか、口ぶりといいますか、どこか威圧的に感じられました。つまり、「どうしてファッションはアートなのか?」という疑問があって然るべきなのですが、この人たちはそういった質問を抱くべきではない、ファッションはアートだ、それを認めないのは19世紀的な人間だ、と決めてかかっているように感じられました。 私自身、「ヴァンクリーフ&アーペル展」を見たこともありますし、京都の織物などを見て色彩が素晴らしいと感じたこともあります。ですから装飾品が芸術たりうるのは全くその通りだと思いますが、この方たちのように、無批判で芸術であることを示そうという気は全くなく、「なぜファッションはアートなのか?」という思考をすることが有意義なことだと感じています。 ですがこの映画ではそういった方向性は存在せず、無批判に「ファッションはアート」と前提を作り、そこから話を進めていきます。 こういった流れはあまり好きではありません。「なぜファッションはアートなのか?」という疑問を抱くのは、ファッションを知らないからですし、そういった方々のためにドキュメンタリーがあると思われるからです。この映画は、早々に門外漢を締め出してしまいます。そうして何を語るかと思えば、自分たちがどれほど大変で、どれほど有意義な仕事をしていて、どれほど語るに値するものを作っているか……ということばかりでした。 こういった矛盾がわからない人たちなのです。語れば語るほど、彼らに対する信頼が失われていくことがわからないのかと……残念に思います。 私は、「ファッションはアートであり、彫刻や絵画と同じだ」と語気を強くしていうよりも、「ファッションは彫刻や絵画とは性質が異なる芸術の一部門だ」と言った方がより正確だと思いますし、ずっとストレートに伝わったと思います。 ファッションは鑑賞方法が彫刻や絵画と異なりますし、その意味も全く違うと思います。その異質性を等閑に付したまま、声高に賞揚しても、何も伝えたことにはならないと思います。彫刻や絵画を見るときの気持ちと、ファッションを眺めるときの気持ちはまったく異なると思います。そこをしっかりと考えなくてはならないと思います。 そういったことを教えてくれるドキュメンタリーでなくてはならないのに、美術展を開くためにどれほど苦労したかとか、どんなに人が集まってどんなに注目されて、どんなにお金を集められて美術館の経営に貢献したかとか、そんなことは些事とすべきであり、本気でファッションをアートだと思うなら、決して語ってはいけないことだと考えます。 成功については、ターゲット層が他の美術展と異なっていることが要因にあることは疑いとして残りますし、そもそもセレブ層が集結している様子はその疑いを強めるものだと思います。 「なぜファッション(fashion = 流行)が、永遠の価値を持つアートに所属するのか。それはどのような意味においてなのか」を真剣に考察しなくてはなりません。どのように我々の意識が変貌したのかも併せて語られる必要があると思います。「ファッションをアートから除外する人間は19世紀的だ」と言うならばです。 私は『ディオールと私』というファッション・ドキュメンタリーを見ましたが、これは非常に素晴らしかったですし、とてもスマートで美しく、ファッションに興味がある人は是非見てほしいと思う、クオリティの高い作品です。 『ディオールと私』は、「これを着る人のために、我々クチュリエがいる」というハッキリした意義があり、お客さんのために、という目的意識が清らかさと統一感を与えています。しかし、この『メット・ガラ』は、いかに我々ファッション展を企画する人間が闘い、驚嘆すべきことを成し遂げたか、という自己顕示的な作品になっており、評価はそれ相応のものになって当然ではないかと思われます。 この作品は、装飾品の美しさが多少見れるというだけで、あとは特筆すべきことのない凡作だと思います。ファッションに興味を持つどころか、逆に反感を抱きやすい内容になっていますので、これでファッションを嫌いにならないようにしていただきたいです。

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