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メットガラ ドレスをまとった美術館
2017年4月15日公開

メットガラ ドレスをまとった美術館

THE FIRST MONDAY IN MAY

912017年4月15日公開

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5.0

ファッションはアートたり得るのか

とても興味深いドキュメンタリー。ファッションに疎くても楽しめると思う。 メットガラとは5月にメトロポリタン美術館で行われるアナ・ウィンター主催のファッションの祭典で、狙いは資金集めとファッションの地位向上とのこと。 当日の映像の豪華さといったらない。錚々たるブランドが、選りすぐりのミューズに着飾らせてやってくる。ハリウッドスターやトップモデルたちが渋滞しててレディガガ級でもモブ扱いだから凄い。 映画は2015年の「鏡の中の中国展」の制作ドキュメンタリーとなっていて、キュレーターのアンドリュー・ボルトンを中心に進行する。メットガラはその企画展のオープニングイベントという位置付け。サンローランやディオール、ゴルチェなど一流メゾンたちの協力を仰ぎ、ウォン・カーウァイが芸術監督という豪華さである。 とにかく課題山積で人ごとながら胃が痛くなる。まず題材がセンシティブで下手をすると人種差別と捉えられるリスクがあり、国際問題になりかねない。案の定中国側は政治的な問題を絡めて懸念を示す。 美術館の中でも、アンドリューら服飾部門とアジア美術部門では意見の食い違いがある。「ファッションはアートたりえるのか?」が映画の一つのテーマであり、伝統的なアート業界ではファッションをチャラチャラした軽薄なものとして一段下に見る風潮があるらしい。面白いのは、デザイナーたち自身もまた、自分たちをアーティストと呼ぶことを好まない点だ。彼らは口を揃えて「私たちは芸術家なんかじゃない。ドレスメーカーである」と言い切る。職人の気概を感じるが、美しいドレスの数々は見る人や着る人の心を動かす。これも芸術だよなぁと思った。 納期遅れなどのトラブルもある。そして当日の席順決めがこれまた一仕事で、アナ自らが采配する姿に大変だなぁとしみじみする。一般人の結婚披露宴だって面倒なのに、一流メゾン・一流スターだらけの席次決め、出てくる名前の豪華さについ笑いつつ、その気苦労を思うとこれも胃が痛い。 数々の苦労を乗り越えて、ガラと展示会は大成功を収める。「大成功したアレキサンダー・マックイーン回顧展を超えろ」が合言葉だったらしいが、実際にマックイーン回顧展を超える動員数を記録した。 「鏡の中の中国展」をじっくり見たい。映画の中でも少し映るけれど、解説付きでゆっくりと見たいと思った。 また、アナ・ウィンターは「おっかない人」というパブリックイメージだけれど、仕事風景を見るとただ普通にボスとして采配しているだけに見える。映画の中でご本人も「私は迅速に仕事を進めるのが好きです。威圧的と言われるのは残念です」と仰っていた。本作のロッシ監督が「もし男性が同じ振る舞いをしていても怖いと噂されはしないだろう。彼女を見る世間の目にジェンダーバイアスがかかっているのではないか」とインタビューに答えている。 様々なプロの仕事人を見るという意味でもとてもおもしろい作品だった。

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