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ナミヤ雑貨店の奇蹟 (2017)

監督
廣木隆一
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3.71 / 評価:4766件

いま一つ物語に共感できなかった

今回取り上げるのは、2017年の角川・松竹配給『ナミヤ雑貨店の奇蹟』。興行収入は10億9千万円とまずまずだった。廣木隆一監督の作品レビューを書き込むのは「娚の一生」「彼女の人生は間違いじゃない」に続いて3作目だ。原作は多くの話題作を持つ東野圭吾の小説で、東野さん原作の映画では「マスカレード・ホテル」のレビューを書いた事がある。
私的評価は★3つ。同じ年に公開された「彼女の人生は間違いじゃない」には大感動したが、本作にはいま一つ惹かれなかった。最初に思ったのは「またタイムスリップものか。ちょっと飽きたなあ」という事。未来から過去へ時間旅行するのは手紙で、この設定は使い古された感がある。物語が面白いかと言うとそれも微妙で、感情移入できる登場人物がいなかった。

大分県・国東半島の西側に位置する豊後高田市で撮影が行われ、邦題にあるナミヤ雑貨店のセットもこの場所に建てられた。描かれる時代は1969年、1980年、1988年、そして2012年(物語上の現代)である。この中では88年のみナミヤ雑貨店は登場せず、養護施設「丸光園」が舞台となる。主演の山田涼介が登場する2012年は、ほとんどが人気のない夜のシーンである。
時代が行ったり来たりするファンタジー映画だが、特撮やCGを使った派手な場面はほとんどない。ただ一つ、山田演じる矢口が仲間の小林(村上虹郎)・麻生(寛一郎/佐藤浩市の息子)と深夜の商店街を駆けるシーンで、街が意思を持ったように明かりが点き、存在するはずのないボンネットバスが突っ込んでくる場面のみ、ファンタジーらしい見せ場になっていた。

ナミヤ雑貨店の近くに建つ、昭和レトロな映画館の上映作品が目を惹く。1969年では「座頭市喧嘩太鼓」「妖怪大戦争」「ガメラ対大悪獣ギロン」のタイトルが確認できる。いずれも1971年に倒産した大映の映画である。1980年では角川映画の「復活の日」のみ確認でき、こうして俯瞰すると11年間に邦画界では半端でない変化が起こっていたのだ。
豊後高田市のロケで印象的なのは、歌手となった元孤児のセリ(門脇麦)が「REBORN」に合わせて踊るシーンの舞台となった真玉海岸である。遠浅の砂浜に細長い干潟が幾筋の川のように見え、日没の眺めが素晴らしいという。エンディングでこの曲を作った山下達郎が歌うバージョンが流れるが、映画で最も感動的なのはセリが自作の詩を付けて歌う場面である。

山田涼介が主演になっているが、彼は仲間役の村上、寛以外に関わる人物といえば、強盗の被害に遭う女性実業家・田村晴美(尾野真千子)だけで、それ以外の人物とは手紙で交信するだけである。登場シーンは廃業したナミヤ雑貨店の暗い部屋と店の周辺がほとんどであり、呟くセリフは世の中を恨む内容が多い。主演にしてはどっちつかずの扱いが気になった。
もう一人の主役は、1980年に癌で死去するナミヤ雑貨店の主人・浪矢雄治(西田敏行)だろう。西田さんの1980年といえば「池中玄太80キロ」「港町純情シネマ」「サンキュー先生」といった人気ドラマに主演し、翌81年には「もしもピアノが弾けたなら」がベストテン入りして紅白歌合戦に出場するなど、お茶の間の人気者として一気に飛躍した時代である。

他の出演者についてだが、唯一長い年月の経過(80年から2012年まで)が描かれる尾野真千子は、あまり歳を取った感じが出ていないのが残念だ。非業の死を遂げる魚屋ミュージシャン(林遣都)は、70年代風の格好が似合っていなかった。自分の出自を知って自殺未遂する映子(山下リオ)は、出番のほとんどが病室で横たわったシーンなのが勿体ない。
69年と80年の象徴的出来事として、それぞれアポロ11号の月面着陸とジョン・レノンの暗殺が取り上げられる。映画を観ると69年が古き良き時代のように思えるが、実際はどうだろうか。多くの名作を生んだ大映は経営難で、ベトナムでは泥沼の戦争が続いていた。交通事故の死者が急激に増えて「交通戦争」という言葉が生まれたのもこの頃ではなかったか。

僕は自分の住んでいる東京都足立区を、地図を片手に自転車で巡って写真に収めるのを趣味にしていた時期があった。古い商店街で、いろんな有名人やスポーツ選手の似顔絵や、標語などを絵手紙のようにびっしりと外壁に貼り付けた店があり、店主の妙なこだわりを感じた。これもナミヤ雑貨店のコンセプトと共通していると言えるかも知れない。
結論を言うとロケを多用した映像は美しく、個々には感動的なエピソードがあるが、全体的には散漫になった(原作があるから仕方ないが)という印象だ。主演の山田涼介はハンサムだが暗いキャラクターで、映画を引っぱる役としては力不足ではないだろうか。タイムスリップ物は、何か一つ緊張感を持続する核となるエピソードが必要だと思うのだ。

詳細評価

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