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修道士は沈黙する (2016)

LE CONFESSIONI/THE CONFESSIONS

監督
ロベルト・アンドー
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3.30 / 評価:69件

彼は何を語らずに去ったのか?

  • dr.hawk さん
  • 2018年4月13日 0時14分
  • 閲覧数 1064
  • 役立ち度 10
    • 総合評価
    • ★★★★★

2018.04.12 字幕 シネリーブル梅田


2016年イタリア・フランス合作のミステリー映画
G8の会合を舞台に、謎の死を遂げた男の告解と、それを受けた修道士の物語
監督はロベルト・アンドー
脚本はロベルト・アンドー&アンジェロ・パスクイーニ


物語はドイツ・ハイリゲンダムの空港にイタリア人修道士ロベルト・サルス(トニ・セルヴィッロ)が降り立つところから紡がれる
空港の外でマジック浮遊するインド人を尻目に高級車に招かれるサルス

バルト海に面した高級ホテルに到着した彼
だがそこは場違いな会合が行われる場所だった
G8による財務相会合
その主催者はIMF(国際通貨基金)の専務理事ロシェ(ダニエル・オートゥイユ)
そして彼はサルスを招いた張本人だった

そこにはサルスの他に、ロックスターのマイケル・ウインツェル(ヨハン・ヘンデンベルグ)、絵本作家クレール・セス(コニー・ニールセン)の異色と、8カ国の財務大臣が招かれている
そしてそこで行われる会合は、世界の経済、特に発展途上国に大打撃を与える内容だった

会議の前夜、ロシェは自室にサルスを招く
そして告解を申し出る
サルスは慎んでそれを受け、そして翌朝ロシェはビニール袋を被った状態で死体として発見された


物語の主題は「それぞれの告解と赦し」である
「それぞれの」とは、原題『Le Confessioni』が複数形であることに由来する

劇中ではロシェひとりが告解を行なっているが、実際のところは登場人物のそれぞれが「修道士の沈黙」によって告解を行なって行く


修道士の呼ばれた理由は明白ながら、その他の異質ふたりの招聘理由がわかりづらい

絵本作家クレールは、絵本で財を得ながらそれに満足していない
これは経済の恩恵を受けても心が満たされていない先進国のエゴの象徴である

彼女は修道士と会うことで、その沈黙の雄弁さに過去を捨てる決意をする
彼女の「ミステリーでも書くわ」は言わば告解に近い
虚構による欺瞞に生きるなら、より健全な魂の発露を願ったのだろう


ロックスターは楽観主義の象徴だろうか
対岸にいて、悲劇を笑う歌(ルー・リード『ワイルド・サイドを歩け』)を奏で、沈黙によってリズムを奪われる
鈍重なのは、それぞれの心にある呵責なのか、傲慢なのかは明白である


物語は「ある数式」の暴露によって、2つ目の道が示される
それまでに決定事項として描かれた結論を根底から否定するものである

数学者でもあったサルスは、その数式を理解しているが、これが不完全なのに右往左往する様を滑稽に見ている

このシーンはそれぞれが決定に対してゆらぎを持っていることを表しているように思えた


ロシェの告解に対し、サルスは赦しは得られないと告げたが、そもそもが神が赦したとしても人は赦さないと思う

この人とは、他人であり「自分」である

この物語は、「自身を裁くのは神でも他人でもなく、自分である」と告げている
特に「自分の行動」が「自身の未来を規定する」と言える

富裕層は痛みを感じないが、決定した当人は自身によって裁かれる
ゆえに心に従わなければならない

ロシェは自身の過去にけじめをつけた
サルスに数式を託し、自身の行動とサルスの沈黙で方向を変えようとしたのではないだろうか


沈黙、それ自体が雄弁ではあるものの、本来は沈黙を解いた後の言葉に重みが増すとも言える

雄弁のあと、鳥の鳴き声ともに消えたサルス
それは「あなたたちの行なっていることは目くらましに過ぎない」と同義のように思えるし、現実に一瞬でも目を逸らすと、それらは自分たちを置き去りにするとも見て取れる

前半のシークエンスでも、目くらましの意味合いで鳥の絵を描いたサルス
嘘まみれの虚構絵本を破り、そこに落書きをする様は、クレールの本心をすでに見破っているようにも思えた


いずれにせよ、嘘つきほど雄弁で、沈黙に耐えられないのは、空白が心を丸裸にするからだろう

それにしても台詞が抽象的で難解、余白が雄弁すぎて情報量が多い映画でした

何を語るかよりも、何を語らなかったのか

それは「自分の運命すらも自分で決められない愚か者たち」への皮肉だったのではないかと感じた

詳細評価

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