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幼な子われらに生まれ (2017)

監督
三島有紀子
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3.72 / 評価:563件

そして父になる

  • kap***** さん
  • 2017年8月29日 2時16分
  • 閲覧数 2116
  • 役立ち度 11
    • 総合評価
    • ★★★★★

三島有紀子監督のこれまでの作品は、どれもファンタジーのようで
果たしてここは本当に日本なのか(と言うより本当に地球上なのか)
と思えて、正直苦手な監督でした。

今回は妙な恰好をした人たちが、突然踊り出したり歌いだ出したりしません。
荒井晴彦の脚本の力によるものなのか、三島監督の別の引き出しなのか、
地に足のついたリアルな人間を描いています。

再婚した妻の妊娠をきっかけに、妻の連れ子の長女が不機嫌になり
「あんたなんてパパじゃない。本当のパパに会わせて」
と言いだすところから物語は始まります。

毎日暴力をふるっていた父に、本当に合いたいとは考えにくい。
6年生と言うと、子供から大人に成長する段階で、
女三人家族の家に、血のつながっていない男性がいることの違和感、
母と信の間に子供が生まれることで、
自分らの居場所がなくなってしまう(捨てられる)ことへの不安。
おそらく本人にも自分の気持ちは説明できないのでしょう。
子供というものは、わざと怒ったり泣いたりして
親の気持ちを探っていたりするので油断できません。

そもそも、例え血が繋がっていても
女の子は中学生にもなると「パパなんて大嫌い」な時期がくるもので、
面倒くさいものです。

信は映画紹介にはダメな父親のように書かれていますが
家庭にもめごとが起こって、悩み、考え、イライラし、逃げ出そうとする、
それが普通の人間ではないかと思います。

信の上司のように「子供は父親の背中を見て育つ。向き合わなくても
一生懸命働いている姿さえ見せておけば子供はちゃんと育つ」
と疑いもなく言う人間よりは、いい父親のように思います。

信と香苗、それぞれの別れた妻と夫、
根っこは誰も悪い人ではないのですが(DV夫の沢田にしても)
それぞれ悪気はないのに「これをやられると、言われるとたまらんなぁ」
と言うことをやってしまう、言ってしまう。
つい相手に依存してしまう香苗。
それが耐えきれないと逃げ出した沢田。
別れた妻・友佳が信に言う、
「あなたは私がどんな気持ちなのか聞いてくれたことがない」
と言うのは、多くの女性が男に対して持つ不満なのでしょう。

淵に立つなどで「怖い浅野忠信」を何度も見ているので
押さえつけられた表情の浅野忠信がいつ切れるのか
最後までハラハラしながら見ました。
(田中麗奈も出ていた葛城事件が頭をよぎりました。)

クレイマークレイマーや普通の人々あたりから
伝統的な家族の崩壊を描く映画が増え、
それが近年、血のつながらない人たちが
家族になっていく様を描いた映画が、世界的に増えてきています。
日本でも去年の「湯を沸かすほどの熱い愛」などの名作が生まれています。

子連れの再婚から生まれる様々なドラマというものは
昔から数えきれないほど映画・ドラマになってきましたが
今はそれは特殊なことではなく、普通のことになっています。

丘の上のまで長い斜行エレベータのある住宅。
八方塞がりで、にっちもさっちも行かなくなった信が
エレベーターを使わず、横の階段を昇っていくシーンは
辛い人生そのものを象徴しているように見えますが、
あえて大変な道のりを逃げずに歩いていこうと言う
信の決断にも見えました。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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  • 泣ける
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