世をダメにする政策を打ち出す輩に見せたい
- とみいじょん さん
- 4級
- 2018年11月7日 22時04分
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- 総合評価
「人は石垣…」とは武田信玄の言葉。
なのに、経済発展の旗印の陰で、手と目をかけられておらず、なおざりにされている子どもたち。
子ども園や習い事に預けて、"我が子"を見ないで済んでしまう計画。
学校の運動会や学習発表会でさえ、ショー化を望む保護者達。
学校はサーカスの養成所でも、芸能プロダクションでもないのだけれど。
周りの子と同じことができるという子どものロボット化が進んでいる。偏差値という数値だけで、できるできないで、図られる子ども達。
食事ときれいな洋服を与えられて、芸をする、ペット化した子ども達。
恐ろしいのは、子ども自身も、その中でしか自分を測れない。
そんな子ども達が増えてきたことを憂いている今、この映画に出会った。
胎内記憶の話も出てくるが、
まじめな、最近のほぼ定説となっている乳幼児研究等をベースにしたドキュメンタリ-。
教育者、心理学者、精神科医だけでなく、学習脳科学者から経済学者、他にもいろいろな方のコメントが挟まれ、そのコメントに合うようなドキュメンタリー映像で構成されている。
昔受講した講義や、柏木恵子先生の論文なんかを思い出す。
放送大学のある講義で「父性とは社会化を進める役割、母性とは傷ついた体や心を癒す役割。子どもは元気な時は父性を求め、調子が悪い時は母性を求める。父性は必ずしも父が、母性は母が負わなくてもよく、男女逆でもいいし、身近な人が代替しても良いが、父性的・母性的に関わってくれる人が必要」と言っていたなあ。
ある講演では「子どもには、継続的に関わってくれる大人が必要(1年ごとに担当者が変わるのではなく)」という話も聞いたっけ。
ある家族心理学者が「喧嘩しても仲直りすればよい。最近の子は喧嘩して仲直りしたことがないから、喧嘩したらすべて終わりと思い、喧嘩ができなくなって、表面的な付き合いしかできない」とも言っていたなあ。ドラえもんとのび太も喧嘩して仲直りを繰り返すバディ。
子どもにかける言葉の量や質(ポジティブな内容か、ネガティブな内容か)で、脳の発達が違うという研究もあるそうだ。
しかも、「あなたが大切」等のポジティブな言葉をかけながら、子どもの興味・試行錯誤を尊重して、手元にあるもの(シーツ等)で遊べばいいというお金のかからない方法を見せてくれる。それが、子どもの知的好奇心・運動能力・想像・創造力を刺激する(遊びはすべての基)。
専門家のコメントは、乳幼児用に見えるけれど、実は思春期以降大人にだってその状況によっての+αを加えれば通用する。
と、緻密な研究に裏付けられた知見と、そんな知見なんか知らずに、日々悩みながら子育てしている姿が映し出される。
なので、”映画”としてみると、堅苦しい。
”講義”としてみると、典拠やデータが示されていない。
また、一貫して「子育ては素晴らしい」という論調なので、
世にたくさんいらっしゃる、相性が悪くて子育てに苦痛を感じていらっしゃる方にとっては、つらい映画なのではないか。
ただ、子育てに苦痛を感じていらっしゃる方や育てられなかった方を責めるような作りにはなっていない。冒頭母性神話を匂わすところもあるが、そこには固執していない。
様々な形の家族が出演されている。
ダウン症っぽい子どもも出演するが、他の子と同じ扱いがうれしい。
主夫が育児の中心を担っている家族。
同性婚の家族。
兄弟が面倒を見ている家族。
祖父・祖母世帯が育児されている家族。
養子縁組された家族。
村全体で育児をしている地域。
他にも他にも。
”いろいろな”家族が出演されているが、一貫して、子育てと向き合っている人々をとりあげているので、鑑賞前に想像していた”いろいろ”とは違って、場合によっては単調に見える。
と、”映画”としては欠点もあるが、世に広めたい映画。
とはいえ、これを実践するには課題もある。
一つ目は、親世代がすでに遊びを生み出せなくなっている。子どもとの遊び方がわからない人が増えている。マニュアルやワークブックがないと不安だという。
そういう人は、各地に増えているプレイパークや、各自治体にある児童館にでも行ってもらえば、そこにいるメンバーが教えてくれる。
二つ目は雇用の問題。
派遣やバイトで働いている人は、休んでいると誰かに変わられちゃうから休めないという現実的な問題。
そして、時短・育休制度がある会社でも、いまだに「迷惑をかける」という発想。
そしてもっと深刻なのが、出世競争等の「遅れをとる」という意識。受験の延長か?そしてそれを煽る団塊世代の祖父母たち。
なんて、堅苦しく考えてもしまうが、
子どもの表情が、駄々こねしている姿でさえ、愛おしい。
子育てと関係していても、しなくとも。
観て、いろいろな人と語り合いたい。
未来をつくるために。
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