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愛を綴る女 (2016)

MAL DE PIERRES/FROM THE LAND OF THE MOON

監督
ニコール・ガルシア
  • みたいムービー 50
  • みたログ 179

3.47 / 評価:129件

純粋さだけでは、人の心は動かない

  • dr.hawk さん
  • 2018年2月1日 23時09分
  • 閲覧数 1123
  • 役立ち度 6
    • 総合評価
    • ★★★★★

2018.02.01 字幕 京都シネマ


ミレーナ・アグス原作の恋愛小説『祖母の手帳』を基に、舞台をフランスに移して紡いだラヴロマンス映画
監督はニコール・ガルシア
脚本はジャック・フィエスキ&ニコール・ガルシア


物語は川の中を歩く主人公ガブリエル(マリオン・コティヤール)の様子から紐解かれる
神を求めてさまよう彼女は、下着もつけずに川を渡り用を足した

場面は変わって、息子のピアノコンクールに向かうタクシーの車中が描かれる
前の車両の荷下ろしで足止めをされた彼ら
外を眺めていたガブリエルは、街区表示を見つけて血相を変える
衝動的に車外に出た彼女は「後から行く」と言い残して息子と夫を置き去りにどこかへ消えた

そして物語は過去譚へと流れていく


ガブリエルはラベンダー畑のある田舎町で育った
両親と妹と仲睦まじく過ごしていたが、ガブリエルにはある秘密があった
それは情緒不安定で、精神的な病だと思われていた
そんな彼女を陰から静かに見守る男、それが後に夫となるジョゼ(アレックス・ブレンデミュール)だった

ある日ジョゼはガブリエルの母に呼び止められ、「ガブリエルが好きなんでしょう? 彼女には夫が必要」と経済的支援をするという名目で娘を引き渡すことを告げる

秘めたる想いを胸に秘めたジョゼだったが、その話を立ち聞きしていたガブリエルに「絶対愛さない」と拒絶された

そしてふたりは、愛の育たない婚姻関係を結ぶことになった


テーマは「愛」、しかもとてつもなく「深い愛」である
武骨なジョゼと、夢見がちなガブリエル
性交ですら拒絶するガブリエルは、娼婦を演じ夫の性欲のはけ口となる

そんなふたりが割かれたのは、ガブリエルに病気(腎結石)が見つかり、療養施設での治療を余儀なくされたからであった
ガブリエルは治療を拒んだが、ジョゼは強引に彼女を施設に入れた

ある日ガブリエルは入院患者のアンドレ(ルイ・ガレル)と出会う
彼は戦地から傷つき帰ってきた兵士であり、腎機能不全に陥っていた
尿毒症に悩まされる日々
当時の医療では先の長くない疾病だった


ガブリエルはアンドレに添うことで、これまでになく愛を渇望する
だが人妻であるガブリエルにアンドレが手を出すことはない
ガブリエルは抑えきれない衝動と疼きの中で、再び得も知れぬ情緒不安定さを爆発させていく


この物語はジョゼの寡黙さが重厚なメッセージを含み、ミステリーを誘発させていく
アンドレとの関係の中で、息子の親は果たしてという疑念
それらを含んでも、なぜジョゼは耐え続けるのか

先を読みがちな私は、息子の父がジョゼであり、彼がすべてを知っているのではと結構早めの段階で気づいてしまった
そのときは「まさか」と思いながらも、それが決定的になったとき、ジョゼの深すぎる愛に心が震えた

予兆と帰結、そのタイミングの素晴らしさ
この段階的に違和感と予感を紡がせる脚本は秀逸だと感じた

伏線は「彼女が夢見がち」であり、誇大妄想が深夜に訪れた夫をアンドレと誤認したであるが、これはさすがに無理筋にも思える
だがそうなってもおかしくないほどに、ガブリエルの心身は喪失していた
この微妙なバランスが賛否を呼ぶかも知れない


私としては許容範囲であり、いくらなんでもと思いながらも戸惑ったが、ジョゼがそれらをすべて受け入れた理由ですべて納得できた


あの台詞はこの映画の珠玉である

さすがに予告編で使うべきではないだろう

この台詞はガブリエルを一瞬に変化させ、ジョゼの動機をすべて表している

そこには彼女がタクシーから降りた理由とその許容があり、息子のコンクールに間に合わなかった彼女に向けた痛烈な一言にも繋がっている

このシークエンスはガブリエルの深い愛を描くとともに、彼がただの寡黙なお人よしではないことも描いている

聖人ではない彼の一面
だがその乱暴さは、ガブリエルを救う強さでもあった


いずれにせよ、久々に脚本に唸った作品であった
物語としてのサプライズも然ることながら、その見せ方が秀逸であると感じた

ミステリーのリードとしての「ガブリエルの焦燥の意味」「ジョゼの寡黙さと余裕」、そこにある「博愛と支配」

これらの紡ぎ方が実に絶妙なのである


ガブリエルの母親に「愛情表現を教わらなかったからでしょう」と言い放つシークエンスにも彼の人間性が現れているが、この親にしてこの娘あり、それに呑み込まれたままではいないという骨太な精神は恐れ入る


生きてこそ、変化するものもある


ジョゼは自分の愛の力を信じていた


清濁すべて受け入れた先にあるもの


人はコントロールできないが、いずれは寄り添うこともある
それは無数の要因の中で、確かなものが存在するときである
ジョゼはガブリエルの心が自分に向くのを待っただけである
彼女の中にある物語に自分が登場するその時まで

これができる男はそうそういないと感じた

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 悲しい
  • 勇敢
  • 絶望的
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