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ポリーナ、私を踊る (2016)

POLINA, DANSER SA VIE

監督
ヴァレリー・ミュラー
アンジュラン・プレルジョカージュ
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3.24 / 評価:89件

解説

バスティアン・ヴィヴェスのグラフィックノベルを原作にしたドラマ。類いまれなバレエの才能に恵まれた少女が、数奇な運命をたどる姿が描かれる。監督は短編などを手掛けてきたヴァレリー・ミュラーと、ダンサーや振付家として活躍するアンジュラン・プレルジョカージュ。映画初出演のアナスタシア・シェフツォヴァがヒロインを演じ、その脇をニールス・シュナイダー、ジュリエット・ビノシュらが固める。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

ボリショイ・バレエ団のバレリーナを目指す、ロシア人少女ポリーナ(アナスタシア・シェフツォヴァ)。練習を重ねて入団試験に合格し、フランス人ダンサーのアドリアン(ニールス・シュナイダー)と恋に落ちる。しかし、入団の直前に出会ったコンテンポラリーダンスに衝撃を受け、その道に進もうと決意した彼女は、入団を断ってアドリアンと南フランスにあるコンテンポラリーダンスカンパニーに参加する。振付家リリア(ジュリエット・ビノシュ)の指導を受けてこれまでとは違うスタイルのダンスを習得しようとするが、足をけがしてしまい……。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2016 Everybody on Deck - TF1 Droits Audiovisuels - UCG Images - France 2 Cinema
(C)2016 Everybody on Deck - TF1 Droits Audiovisuels - UCG Images - France 2 Cinema

「ポリーナ、私を踊る」ダンスの躍動感と映画的な醍醐味をそなえ、一粒でニ度おいしい。

 ダンス映画というと、それだけでかなり限定されたイメージを抱いてしまうだろうか。ダンスに興味がないと辛いかもしれない、ただ美しい踊りを見せる映画ではないのか、など。しかもグラフィック・ノベルとして人気のこの原作を映画化した共同監督のひとりは、著名な振付家のアンジェラン・プレルジョカージュ。ある意味これは、映画として落とし穴になる可能性もあると、正直観る前はわたしも懸念していた。だが蓋を開けてみればそんなことは杞憂だった。否それどころか、ダンスの美しさや躍動感と、映画的な物語としての醍醐味、双方を楽しめる一粒で二度おいしい作品になっている。

 幼い頃からボリショイ・バレエ団に入ることを夢見て、ダンスを学んでいるポリーナ。学校帰りに歩きながら、その歩調が自然に力強いステップに変わって行く様に、彼女の秘められたエネルギー、ダンスへの情熱がほとばしる。だが個性よりも完璧さが要求される厳格なクラシック・バレエの世界は逆に、彼女の奔放な情熱を次第に削いでいく。ボリショイに合格しながらもすべてを捨てて、ポリーナはモダン・バレエの修業に南仏へ旅立つ。しかしモダンの世界に行けば今度は、「あなたの踊りには感情がない」と言われ、無力感に浸る。審美的な美しさを保ちながらも、こうした彼女の挫折や葛藤を掬いとるようなカメラワークが秀逸だ。

 ポリーナ役のアナスタシア・シェフツォワは、サンクトペテルブルクのバレエ団出身で、これがスクリーン・デビュー。踊りはもちろん筋金入りとして、ポリーナの感情の起伏を鮮烈に表現する演技力をそなえ、しかもマトリョーシカのようにフォトジェニックである。さらに彼女を取り巻く共演陣が強力で、ダンス経験もあるジュリエット・ビノシュ、パリ・オペラ座の元エトワール、ジェレミー・ベランガール、そしてポリーナのパートナーに扮するのが、現在フランス映画界で人気急上昇中のニールス・シュナイダー。

 映画を観ているうちに、ヒロインのポリーナと演じているアナスタシアがオーバーラップし、ひとりのバレエダンサーの成長譚を描いたドキュメンタリーを観ているような錯覚に陥る。ポリーナがクライマックスでベランガールと踊る頃には、ダンス・ファンでなくても高揚を覚えるほど、物語に引き込まれているのではないか。

 ちなみに本作の後、アナスタシアはバレエ団を離れ、今はまさに振付家と女優を目指しているとか。この映画を観るとそれも十分に頷けるほど、彼女は格段に光っている。(佐藤久理子)

映画.com(外部リンク)

2017年10月19日 更新

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