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スイス・アーミー・マン
2017年9月22日公開

スイス・アーミー・マン

SWISS ARMY MAN

972017年9月22日公開

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4.0

現代的コメディタッチの前衛作品

「遭難した無人島で、死体がスイスアミーナイフのように便利に使える」という作品紹介を読んだ時点で、よっぽど変な作品だろうなとは思って観てみましたが、なるほど、とてもとても前衛な作品でした。 当サイトの投稿ではほとんどの方がNGを出されているようですが、個人的には前衛モノが好きなので、本作品もまずまずの評価です。前衛モノは、意味不明なストーリーが多いですが、普通の作品は意外と数年経ったら内容を忘れてしまうのに対して、前衛作品はずっとずっと何年も「あれはいったい何だったんだろう?」と記憶に残ります。その結果、あとから、「ひょっとしてこういうことか?」などと作品を改めて噛みしめたりします。 「なんで死体が?」とか、「なんでオナラ?」とか、「なんでマスターベーション?」とか、たしかにややお下劣な話題も多いのですが、では、純粋なコメディかというとそうでもなく、むしろ、現代社会において孤独に生きる若者の悩みをシリアスに描いているようです。 圧巻なのは、死体を演じるかのハリーポッターのダニエル・ラドクリフです。正直言って、観ているときは「なんてハリーポッターの人に似ている役者だろう」と思うほど、まさかこんな役をあの有名俳優がやるわけないだろうと思っていましたが、観終えてチェックしたところ、やはり彼でした。名演だと思います。もともと、顔色感、痩せた骨格、そう言われてみれば死体役が適任かもしれないですね。 超ヒットシリーズで名をあげた俳優は、あまりにもその役でのキャラが出来上がってしまい、なかなかその後の出演作品がヒットしないなどと言われます。ドラマ「フレンズ」の各メンバーや、日本では寅さんの渥美清さんなど、たしかにそれ以外の作品では元のヒット作品のキャラを変えられないというジレンマがあるように思えます。ひょっとしたら、ダニエル・ラドクリフもそうしたジレンマと戦っているのかな?なんて思ったりします。 映画全般を通してストーリーはハチャメチャですが、わりと伝えたいことは単純なような気もします。うだつが上がらず、自分を隠して思いを伝えられずに一生を過ごしてしまう主人公の思いを、死体のマニーが気づきを与えてくれたのかと。たぶん、マニーは主人公のハンクの別の姿なんだろうと思います。自分の別の姿を客観的に見て、自分自身を理解していくという話なんだろうかと今の時点では思います。 でも、「ホントにそうなの?」「いやいや、こうなんじゃないか?」「もっと、こういう話だったのでは?」とかとか、この後何年もの間、思い出しながら考えるのが前衛作品の味わいです。

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