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映画ドラえもん のび太の宝島 (2018)

監督
今井一暁
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3.95 / 評価:2072件

倫理観が破壊された教育上悪いシナリオ

  • ltz***** さん
  • 2020年6月24日 1時22分
  • 閲覧数 1109
  • 役立ち度 3
    • 総合評価
    • ★★★★★

この作品の最も悪い部分は脚本、つまりシナリオにある。
出来事の前後を考えていないその場しのぎの感情論、矛盾した主張、狂った倫理観。それらで満たされてるのが今作のシナリオ。


第一に、『あらかじめ決まっているシナリオに合わせてキャラが動いてる』と強く感じる。
『キャラクターが行動し、その結果物語が動いた』かのように錯覚させるのが脚本家の仕事ではないのか。
やりたいシナリオありきでキャラの言動をはめ込まれているので、なんでこのキャラがここでこんなこと言うんだ?となってる。
その結果起こるのが、シナリオに合わせてキャラの頭が悪くなるという現象。
『船上なら誰でも命令を聞いてしまう帽子』をドラえもんが何の理由も無く船外に捨てたのには絶句した。使えよ。


また、今作のゲストキャラである少年、フロック。
彼は「船長(父親)の言いなりは嫌だ!」と言いだして島外へ逃げ出してきたとらしい。一人で。
そして島の外で「妹を島から連れ出したい!」とか言い出してる。
おかしいでしょ。別に監禁されてるわけでもなく島で平穏に暮らしてる妹を、なぜ初めから一緒に連れて逃げなかったのか?

結局『ドラえもんらとゲストキャラが協力し、妹としずかちゃんを助け出す』がやりたかっただけだろう。
こんな人間の感情や行動を真剣に考えてない映像美至上主義で話が進んでいく。


今作のメインで脚本が描きたかったことはおそらく船長家族の家族愛物語だろうと思う。
その船長の真の目的は『地球が滅びる未来を知ったので、地球のエネルギーをいくらか頂戴し、自分の家族含む島の住人たちと一緒に宇宙に逃げる』というもの。
これに対し、ドラえもんらは「自分さえ助かればいいのか!」と阻止する訳だが、この主張が気持ち悪いし、怖い。
これって裏を返せば「全員が助かる方法を探そう。でも、もしそれが無いならば抜け駆け無しで全員で死のう」という論に聞こえる。

いいじゃないか船長の考えは。全員を助けられないことがわかってるなら、優先順位は自分、家族、大切な人。至極あたりまえで人間的。
これを敵、悪として描くのはあまりにも教育上悪い。
船長の行為を非難する人はいるだろう。
けど、「僕たちは子供代表ひいては地球代表だ!」と言わんばかりのドラえもんたちに「自分だけ助かろうとするのは悪いことだ!」と言わせるのは、子供向けを謳ってる作品としては論が乱暴すぎる。
戦時中じゃあるまいし、この倫理観、正義感には同意できない。

そしてのび太の言う「父親ってのは子供のことを大切に思ってるものだよ。なぜならウチの親がそうだから」というトンデモ理論。
これで「良いセリフ言うなあ」みたいな雰囲気にするのはあまりにも無責任すぎる。これは教育ではなく洗脳や詐欺に近い行為。
こんな言葉をのび太に言わせないでほしかった。

さらにタチの悪いことにドラえもんたちは『全員が助かる方法の提案や模索』は一切しない。
彼らがするのは徹底して船長の計画阻止。実力行使。
なぜならここが格好のクライマックスアクションシーンチャンスだからだ。

かっこいい作画でグリグリ動かし、君の名はみたいな綺麗な背景見せて、感動的な音楽を流し、のび太に何らかを叫ばせれば感動シーンの出来上がり。
きっとそう思っているんだろう。
教育上大切な部分は無視し、大衆が感動する画面作りに全力を注ぐ方が大事という訳だ。
中身の無い娯楽作品は決して悪い事じゃないが、ドラえもんじゃない作品でやってくれ。


今作の敵勢力の行動原理は常に謎である。
地球脱出という船長の目的に同意していたわけでもないのに、それを阻もうとするドラえもんたちの妨害をし続ける。
恐怖や金銭で支配されているわけでもないのに何故か皆船長の言いなりに海賊行為を繰り返し、急に宇宙行くぞと言われ有無を言わさず道連れにされる島の人たち。
彼らは何を思い、何を考え、何をしたのか?それらは一切描写されない。

一貫して船長親子の家族エピソード以外に興味が無いと言わんばかりのシナリオ。
地球の存続や他人の人生を巻き込んでも、主役の親子が仲直りしたからそれでオッケー!という倫理観。
船長の「自分さえよければ良し」という価値観を作中で否定しているのにも関わらず、「主役さえ幸せなら良し」という価値観が話のオチになっているのだ。
この作品は矛盾に満ちている。

さらに驚くことに島の住民たち、親子喧嘩終了後には一切登場しない。
まるで初めから島にはこの親子しかいなかったかのように。
たった一人の男の個人的な計画に人生を振り回された彼らはいったいどこへ消えたのだろうか?

そういった人間の感情や行動をないがしろにし、高度なアニメーション作画とうわべだけの親子愛で感動を提供した気でいる。
今作のシナリオは常に『ごまかし』と『その場しのぎ』で出来ており、そこに『人間』は一人もいないと強く感じた。

詳細評価

物語
配役
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映像
音楽

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