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THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY リミット・オブ・スリーピング ビューティ (2017)

監督
二宮健
  • みたいムービー 116
  • みたログ 321

3.05 / 評価:205件

才能と労力のムダづかい

  • ookina_haruko_chan さん
  • 2017年11月3日 4時49分
  • 閲覧数 2333
  • 役立ち度 7
    • 総合評価
    • ★★★★★

設定とキャストに心惹かれて観に行きました。
サーカス、妄想と現実・・・なんか、外すんじゃないかとイヤ〜な予感もしていたのですが、もしかすると意外な拾い物、ということもあるし・・・
桜井ユキは初見ですが、なかなかいい味をだしている。
その他の役者も、特に狂言回しのピエロ役の古畑新之は強烈な印象を残している。
・・・が。
それだけ。
心に残るシーンがあまりない。

全体に、映像が奇抜で90年代アート映画的な香りが漂うが、それらにあった、もっと斬りこむような鋭さがいまひとつ感じられず、ミュージシャンのPVの領域を出ていない気がする。
90年代に今よりももっとミニシアターがたくさんあった時代には、こういう作品が頻出して、玉石混交の体をなしていたと思います。
私はその時代、デレク・ジャーマンが好きで、本作を観始めた際にジャーマンを想起したのですが、無作為でまとまりのないように見えて、ジャーマンの作品は非常にメッセージや愛に満ちている。駄作と言われる作品も多いが、「想い」が込められていたと思う。
本作にはなんら「愛」が感じられない。
役者にしても、駒として使っている感じがして、薄い。

高橋一生目当てに来た女性客が多かったでしょうが、見た目だけ美しく取り繕った彼のこの役を、ファンがかけがえのない作品ととらえるだろうか。

とはいえ、役者のPVとしてはまぁまぁ秀逸といえる。
一瞬だけ見れば、それぞれの役者に見せ場を与えているし、印象づく。
私は満島真之介に興味があって、ちょっと見てみたいな〜と思って観に行ったのですが、彼の見せ場はちゃんと確保されていた。
エセっぽいマジシャンの誇張された役どころ。
ただその役を映画全体にもっと意味をもつものにしてくれれば。
ひとつひとつのパーツと全体がつながっているようで、つながっていない。

若い才能あふれる人の、拙いがゆえの失敗作、は許せる。
やりたいことがうまくまとまらなかったり、尺に収まりきらなかったり。
でも本作は、「これぐらいやっときゃ、いいでしょ」的な、若いのに妙に老成して小さくまとまってしまっている感があって、どうにも食えない。

混沌とした作品そのものは、否定しない。
ストーリーに感情移入するだけが作品ではないことくらいわかっているし。
ただそこに作者の思いがあるかどうかで、作品の印象はだいぶ変わると思う。
塚本晋也監督の「鉄男」を初めて観た時には、「ナニコレ!?」って思ったけど、そこには「パッション」が感じられた。
長崎俊一監督の初期の作品群も、本当に「ん〜・・・?」な作品ばかりだけど、やっぱりそこにはなんともいえぬ「味わい」があった。
たとえば「9月の冗談クラブバンド」では、友人の死を巡る混沌としたストーリーが、ただダラダラと繰り広げられるのだが、稚拙ながらも死への悼みみたいな感覚がそこここに潜んでいて、何十年たっても印象に残っている。
鈴木清順にしても、初期からエロスと混沌、まさに「芸術は爆発だっ!」的なエネルギーに満ち溢れている。
寺山修司にしたって、とっぴなことをやっているように見えて、作品のベースにはひとつの流れが貫かれている。
ニコラス・ローグの「トラック29」は本作と同じように妄想と現実を描いたもので、彼のキャリアの中では駄作と言われてしまう作品のひとつかもしれないが、妄想の持つ力を最大限活かし切った作品だ。
妄想といえば「ドグラ・マグラ」が思い浮かぶが、そこではもっと異様な世界が繰り広げられていた。
例えが古すぎる、と若い人たちは思うかもしれないけれど・・・

監督に才能はきっとあるのだろうから、小手先に走らず、もっと自分の作りたい方向に突っ走ってみてもいいと思う。
今の時代がそれを許さないのかもしれないけれど・・・
次回作は、もっと突き抜けたものをお願いします!

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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