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THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY リミット・オブ・スリーピング ビューティ (2017)

監督
二宮健
  • みたいムービー 116
  • みたログ 320

3.05 / 評価:205件

ベタベタな映像イメージ。才気と凡庸。

  • kot***** さん
  • 2017年11月9日 19時28分
  • 閲覧数 2843
  • 役立ち度 12
    • 総合評価
    • ★★★★★

才気走った要注意の若手監督・二宮健のウワサを聞きつけ期待していたが…。

現実と幻想をごちゃ混ぜ、時系列もシャッフル、手法自体がすでに手垢まみれのなものではある。
でもまぁ、そういうややこしい手法は僕の好み。
もちろん、この種の作劇に整合性は求めないが、理屈を超えた圧倒的なイメージが必須。
一生懸命な姿勢は感じるし応援したいが、残酷だが、才能が凡庸なのでは?と疑ってしまう。

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スター女優誕生の闇。
現実と幻想は同一かも。
ラブストーリー。
3つのテーマを行ったり来たりするが、どれも深堀りされず仕舞い。
それぞれのテーマを語るために「それでも世界は素晴らしい…。」といった、クサイ台詞ばかりを恥ずかしげもなくかましてくる。
パンフにも、それらのクサイ台詞が大きく掲載されていて、目を疑ってしまった。
第一感で思いついても、推敲されるべきベタベタ台詞だと思うんだが。

美術と照明に関して、注力しているのはよく解る。
しかし、その点で言えば、本作は『ヘルタースケルター』と近い題材であり、蜷川実花の真骨頂であるキッチュな美術・色の氾濫と比べると、本職とのセンスの差は明らか。

広角レンズでの遊びや、ふり回しの多いカメラワークは、好みの問題ではあるが、ここぞというシーンが弱い。
簡易スタジオでの最初のキス。
中途半端な構図でなく、ドーンと中央で捉えてこそ役者も輝くはず。
夜景の屋上ベッドで対面座位のセックス。
周囲をグルグル廻る撮影では、まったく色気が無い。
『ヘルタースケルター』で、沢尻エリカと窪塚洋介というスター2人が、下品なセックスをしてたのに負けてはダメ。

フルヌードに対して、申し訳ないが、アキ役の主演・桜井ユキが凡庸に思う。
もうすぐ30才「女性の賞味期限」という議題が少し登場するが、主演女優・桜井ユキに関しては、そういう問題じゃない。
美醜ではなく、映画役者としての顔も体も弱い。
アキが純朴な頃、喜びを飛び跳ねて表現するあたり、単に演技もヘタ。
満島ひかりだったら、まったく違うレベルの作品になったはず。
カイト役の高橋一生にはイケメン以外の魅力を一切感じない。
すべて監督の演出力不足だと思いたいが…。

ビジュアルにこだわってるのに、ファッションが弱い。
アキの安っぽい黒スリップ、カイトの異質感は黒マント頼り。
こういう映画は、もっと奇抜で華麗なファッションが見たいもの。
シーンを減らしてでも、経費を割り当てるべきだった。

屋上にガラクタの部屋というのも、既に安物のPVなんかで、消費され尽くしたイメージ。
手品セットのテーブルを浮かせて喜んでいる馬鹿なサーカス小屋にも、まるで魅力も実在感も感じない。
もっと定番にして「怪しいストリップ劇場が心休まる場所」のほうが、経費削減できて、ラブシーンの意味が深くなるはず。

冒頭の乱交パーティー、上半身裸で踊る客に男が多すぎるのが残念。
おっぱいを出せる女性が集められなかったのだろう。
モブの動きの演出がダメだが、ストロボの明滅でごまかして、それなりに見える。
しかし、乱交=アイマスクという演出には、もう飽き飽き。

話がそれるが、映画によく登場する乱交パーティーが、たいして変態じゃないのが、いつも残念。
要するに、セックスの描き方が、かっこつけすぎ。
AVの「バコバスツアー」のほうが、よっぽど笑えて、人間の本質に迫っている。

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些末な点だが、いいかげん「写真家=カッコイイ」という映画の定型は、どうかと思う。
本作において、カイトが写真家である物語上の必要性は何も無い。
かっこつけるために写真家にするなら、せめて、撮影動作に少しはリアリティを持たせて欲しい。
ストロボの前に立って撮るとか、白布バックのポートレイトなのに横位置で撮るとか、ありえない動きが気になる。
ポラロイド愛用者なら、大切なポートレイト撮影は、デジタル一眼レフでなく、フィルム中判にしたほうが、かっこがつくのに(機材なんてタダ同然でレンタルできるし)。

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本作は、園子温の近作『アンチポルノ』と、新進女優のヌード・現実と幻想・色と照明…など、題材も演出方針も極めて近い。
『アンチポルノ』が冒頭に国会議事堂を映し、天下国家からエロまで語るというフルスイングで、思いきり空振り大失敗しているのがキュートであるのに対し、本作は、若手監督なのにスイングが弱く、失敗すらもできていないように感じる。

屋上ベッドのアキに、ポラロイドが次々降ってくるシーンは、『わたしはロランス』の洋服が降るシーンを思い起こさせる。
二宮健は、同世代グザヴィエ・ドラン並みの、映像やファッションの創造性を獲得できれば、世界に羽ばたく作家になれるかもしれない。

色々と難癖をつけたが、映画作家の熱量を感じる作品ではある。
次作があれば、二宮健監督の才能を確かめに行きたい。

詳細評価

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