2017年11月4日公開

やさしくなあに ~奈緒ちゃんと家族の35年~

1102017年11月4日公開
やさしくなあに ~奈緒ちゃんと家族の35年~
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作品情報上映スケジュールレビュー

あらすじ・解説

てんかんと知的障害がある、1973年7月14日生まれの西村奈緒さんは幼少時に重い発作を繰り返し、医師に長くは生きられないと診断されてしまう。だが、専門病院での治療を続けた奈緒さんは、地域の中ですくすくと成長していった。1990年代、監督の姉で奈緒さんの母である信子さんは母親仲間と地域作業所「ぴぐれっと」を立ち上げ、障害者たちが地域社会で生活する道を探る。

シネマトゥデイ(外部リンク)

作品レビュー(1件)

泣ける25.0%かわいい25.0%笑える25.0%切ない25.0%

  • ookinaharukochan

    5.0

    私小説とドキュメンタリーのはざま

    これはてんかんと知的障害を併せ持つ「奈緒ちゃん」(といってももう44歳の女性)の物語。 大きなドラマがあるわけでも、声高に思想を訴えるわけでもない。 それなのに、この作品の持つ力強さはなんだろう。 この作品はシリーズが4作め、映像を撮り始めてもう35年になるという。 そのわけは・・・ 奈緒ちゃんは監督の姪っ子、監督の実のお姉さんの娘だから。 生まれて間もなくてんかんを発症し、「長く生きないだろう」と医師に言われたという奈緒ちゃんの、プライベートフィルムとして撮り始めたのがきっかけだそう。 でもこの映像は、単なる「家族の記録」という枠に留まらない。 なぜだろう・・・そこにはほどよい「距離感」があり、それでいて、家族に近い人ならではの、とても奇跡的な瞬間をすくい取っている。 このシリーズは、同じ映像を別の作品に取り入れることもある。 たとえば、奈緒ちゃんの家の目の前にある公園の桜。 こどもたちが幼い頃、近所の子と遊ぶシーン。 ピアノ教師をしていた奈緒ちゃんのお母さんが、近所の子たちを集めて催すひな祭り。 奈緒ちゃんが一人で小学校に行く日。 なんてことはないはずの平凡な1日が、これ以上ない輝きを放つ。 シリーズをずっと見てくると、私たちまでもがそれを体験してきたかのような、不思議な懐かしさを感じる。 でも本作で、光だと思っていたものに本当は暗い影の部分もあったことがわかる。 ひょうひょうとして明るく見えたお父さんと、時にはやさしく時には厳しく、本当に奈緒ちゃんのこれからのことを思って愛情を注ぎつつも少しずつ自立させてきたお母さん。 奈緒ちゃんがグループホームに入り、奈緒ちゃんを共に支えてきた弟の記一くんも独立して、夫婦二人きりの暮らしになった時、ちょっとした隙間、亀裂ともいえないが我慢するにはつらい二人の間の距離感が生まれる。 カメラの前でお母さんは心に浮かぶ空虚感について語る。 そしてある時、お母さんは家を出てしまう。 一方、お母さんが立ち上げ、奈緒ちゃんも所属する障害者作業所で働く記一くんは、自分の弱さを自覚しつつも、自分中心のお父さんに反発する。 お正月に帰省していたが口論になり、突然帰ってしまう。 奈緒ちゃんがいることによってつむがれていた何かが、少しぐらついてきている。 それぞれは皆、いい人なのに、何かうまくいかなくなる。 どんな家族にだって、その歴史のなかで、そういう時はきっとある。 誰がいいとか悪いとか、どうしたらいいとか、そういうことは作品のなかで問われない。 本当だったら、実の姉に味方して、お父さんを責めてもおかしくはないけれど、撮影する側のまなざしはとてもあたたかい。 おそらく、監督始めスタッフたちは、長い長い時間奈緒ちゃん家族と共にいて(しじゅう一緒にいるわけではないけれど、お正月には必ず来ているそう)、「撮影」をしている、という構えた立場ではなく、同じ時間を過ごしている、「家族」とはいえないけれど「仲間」のような存在になってきているのだと思う。 でなければ、あんな風に自然に、家族の不和について、ちょっとしたほころびについて、語ることはできないはずだ。 結局、最後は理由も経緯も語らず、いつのまにかお母さんは戻ってきている。 でも不和が完全に消えたわけではなく、記一くんはお父さんのいない隙に、実家に遊びにくる。 ちょっとしたいさかいの際、奈緒ちゃんが言う「やさしくなあにって言って」(みんな仲良しになろう)の台詞がつなぎとなって、ふっと気持ちがほぐれる。 人と人とがつながることって、そんなに簡単なことではないけれど、少しずつ、心を素直にすることによって、本当に少しずつ関係が変わっていける。 そんなメッセージがさりげなく盛り込まれている気がする。 アラーキーの写真が、女の人を撮る時には女の人の内臓にぐっと迫るような、こどもを撮る時にはこどもの「気分」を切り取っているような、花を撮る時には花の持つはかなさとエロスをぐっとつかんでいて、対象とすごく近しい撮り方なのに、自分の奥さんを撮る時には何か、遠くにあるような客観性があって、それでいてその内面にすごく迫っている。 その距離感を思い出すような、「私小説」と「ドキュメント」のはざまのうつくしさ、が感じられる映画だと思う。 うまく説明できないけれど、単なる美談ではない、「世界の片隅」を切り取った良作。 ずっとずっと作り続けていってほしい。

スタッフ・キャスト

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基本情報


タイトル
やさしくなあに ~奈緒ちゃんと家族の35年~

上映時間

製作国
日本

製作年度

公開日