ここから本文です

ザ・サークル (2017)

THE CIRCLE

監督
ジェームズ・ポンソルト
  • みたいムービー 567
  • みたログ 2,039

2.81 / 評価:1404件

公開先に立たず

  • かなり悪いオヤジ さん
  • 2020年5月12日 17時16分
  • 閲覧数 2376
  • 役立ち度 3
    • 総合評価
    • ★★★★★

「外出自粛」「三密禁止」「ソーシャルディスタンス保持」…人間同士のふれ合い自体が問題視されている状況下で、FACEBOOK+Googleのような“ザ・サークル”を介して“誰もが情報をオープンにして繋がり合う世界”を描いた本作を見ると、とても複雑な気分にさせられる。まるでIT社会の可能性を信じているかのような終わり方をしていたが、インターネットによる超監視社会に向けられた監督のまなざしはけっこうシビアである。

友人アニーの紹介でザ・サークル顧客対応係として採用されることになったメア(エマ・ワトソン)。まるでチューリング・テストのような面接試験、顧客の“いいね”がそのまま貢献度スコアとなってディスプレイに表示される簡潔明瞭な評価制度。勤務時間以外でも会社のコミュニティに参加することを求められ、難病を患う父親を介護する母親のいる実家からも次第に足が遠のくメア。やがて小型カメラを世界中に設置し世界を一つにつなげデータ管理するSeechangeシステム構想をぶちあげたCEOベイリー(トム・ハンクス)に、システム治験者第1号に抜擢されるメアだったが…

トイレと寝るとき以外はサークルに常時接続され、それを見ている会員からお節介なSMSがひっきりなしに届く超ウザさ。両親のSEX動画までアップされてしまい、山奥にひきこもっていた幼なじみがスマホ片手の会員に追っかけ回されたあげく事故死すると、みなの注目を浴びて有頂天になっていたメアはさすがにショックで寝込んでしまう。普通の人ならここで鬱病を患い社会復帰の道を絶たれてしまうところだが、さすが才女エマ・ワトソンが演じているだけあって主人公メアのとった行動は瞠目に値する。

一部の人間だけを監視するのではなく、監視する側の情報も全てオープンにしてしまえばエエじゃないかと思いいたるのである。なるほどね。ブロック・チェーンの構造理念をSNSに導入したようなシステムがあれば、未来社会は薔薇色になるとメアは考えつくのである。選挙や納税から犯罪捜査まで、国家機能をすべてサークルに取り組む構想を経営陣の前でぶちあげるメア。新興宗教のグルよろしくアクセスは基本的人権とTEDスタイルで熱く社員に語りかけるエマ・ワトソンの姿は、もはやスティーブ・ジョブズ化しているといっても過言ではないだろう。

しかしここで、自分が設計したシステムや会社経営そのもののあり方に疑問を抱いている伝説的SEタイ(ジョン・ボイエガ)や友人のアニー同様、“何かが間違っていること”に観客は気づくのである。資源豊富な新疆ウイグル自治区で中国共産党が行っている超監視システムを見ればそれは明らか。第二次大戦下の独仏、コロナ禍で自粛警察を気取る日本人にしても、情報公開の名のもとにチクリたおすエセ正義漢が続出し、人目を気にするあまり生活そのものから自由を奪われることが目に見えているからである。

政治利用する側の情報を完全にオープンにしていないからそうなるのでは?そんな理想論が通用するほど人間は高潔な生き物ではない。そもそも匿名性が最大の魅力のネットに自分の情報公開を義務づければ、誰も情報をアップロードしなくなり、インターネットそのものが無用の長物と化してしまうだろう。自分への言及をやめないかぎりシステムは循環参照を繰り返しやがて崩壊する。ゲーデルがその不完全性を指摘する以前に、すでにわれわれ人間は本能的に違和感を覚えているのである。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 恐怖
このレビューは役に立ちましたか?
利用規約に違反している投稿を見つけたら、次のボタンから報告できます。 違反報告
本文はここま>
でです このページの先頭へ