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否定と肯定 (2016)

DENIAL

監督
ミック・ジャクソン
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3.68 / 評価:580件

非常識と不道徳

  • GODOFGOD さん
  • 2018年1月11日 4時39分
  • 閲覧数 1309
  • 役立ち度 8
    • 総合評価
    • ★★★★★

DENIAL  (2016:イギリス/アメリカ) 
監督:ミック・ジャクソン 
脚色:デヴィッド・ヘアー 
原作:デボラ・E・リップシュタット著『否定と肯定 ホロコーストの真実をめぐる闘い』 
出演:レイチェル・ワイズ
   トム・ウィルキンソン
   ティモシー・スポール
   アンドリュー・スコット 他. 

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《物語》
1994年、ジョージア州アトランタ──、ユダヤ系アメリカ人のデボラ・E・リップシュタット教授(レイチェル・ワイズ)は講演会に現れた〈ホロコースト否定論者〉の英国人作家デヴィッド・アーヴィング(ティモシー・スポール)に猛抗議を受けてしまう。彼は、彼女の著書において自分が侮辱され名誉が傷つけられたと主張するのだ。その後、アーヴィングはリップシュタットと書籍出版社ペンギン・ブックスを相手取り英国にて名誉毀損訴訟を起こす。米国と違い英国の司法制度では被告側が立証責任を負う為、法廷弁護士リチャード・ランプトン(トム・ウィルキンソン)らが率いるチームによって原告の主張を打ち崩す作戦が練られることに。
2000年1月、王立裁判所にて世界中のマスコミが注目する歴史的裁判が始まる。


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《感想》
映画の出来はともかく、鑑賞後に家族や友人と話をしてみたくなる映画ではあった。ここで掲げられたテーマや類似した事件などについて考えさせられる。実話なのでネタバレもへったくれもないが、最終的には訴えを起こしたアーヴィング氏が反ユダヤ主義のヒトラー信奉者でホロコーストに関しては詳しい専門知識を持っておらず、被告側の主張が認められ判決が下る。本件事案はホロコーストの真偽の裁判ではない。彼を侮辱した事実があったかどうかの裁判である。

原題はDENIAL(→否定/拒否)。リップシュタットの論説・主張を「否定」するアーヴィング氏と、彼が起こした訴訟の主張を「否定」するリップシュタット側との【2つの否定】の物語である。邦題や邦訳本〈否定と肯定〉に引っ張られると「肯定側の美化」と捉える人もいるが、そもそも「肯定側」という描写があるわけではない。
本作で救いがあるのは、本編終了後にアーヴィング氏のその後を説明する末文や彼を貶める描写がなかったのはフェアだと感じた。
アーヴィング氏は、本裁判の判決後にこれの罰金支払いで破産、2005年にはホロコースト否認規制法のあるオーストリアにて発言を行い逮捕されている。リップシュタット裁判後に彼を刑事訴追しようとする外野の動きがあったが、リップシュタット氏は「歴史に関わる学者の論争を裁判に持ち込みたくない」としてこれを拒否。これらは劇中で説明はないが、アーヴィング氏を侮辱し一方的に「悪」として貶めてるようには見えなかった。アーヴィング氏と娘ジェシカのカットは重要な場面。反ユダヤ主義の書籍で稼いだ金で生計を立てて育てた娘だが、結局はその裕福な暮らしも本裁判後は上記の通り。
反ユダヤ主義活動で、ホロコースト犠牲者や生存者の名誉が傷つけられ、今度はその報復として反ユダヤ主義者を磔にするなら、イエス・キリストや聖書の時代まで遡る論争になってしまう。劇中「ユダヤ人はホロコースト捏造で稼いだ金でイスラエルを建国した」と否定論者の下劣な文言をマスコミが煽っていたが、反ユダヤでありながらユダヤ的な金稼ぎに取り組むアーヴィング氏の矛盾を落としどころとするまとめ方。実話題材でこのテーマ、もうこれ以上はどうにもならないと思う。

ホロコースト、南京事件しかり、911しかり、パールハーバーは「嘘だ捏造だ」、広島・長崎原爆も「嘘だ捏造だ」、フランス革命は「嘘だ捏造だ」、キリストも聖書も「嘘だ捏造だ」とする輩の経済活動(ゲーム)。他人の名誉や尊厳を傷つける目的で知識を悪用し食い物にしてる輩は残念ながら世の中に多くいる。要はその目的と立場。
アーヴィング氏の個人的な反ユダヤ主義思想と裁判が社会的に注目され、それがまた別の者の金儲けになる。真実と虚偽が天秤にかけられ、それが経済効果を生み出す。その活動で資金を得る輩の存在。
エデンの園の知恵の樹の実と、生命の樹の実の両方を食べれば神の存在に等しい「永遠」を手に入れられるとされる。聖書引用を指摘すれば、男尊女卑の逆転描写で本作は女尊男卑に見えなくもない。強く卑しい男は子を産めないが、弱い女は子(人間)を生み出す能力があり永遠に子孫を繁栄させられると。だから科学と女性が社会を動かせば不毛な争いも起きず永遠に人々は幸せになれる、という富裕層(エルフ)の洗脳ゲームが今流行だ。最近のフェミニズム運動への便乗諸々含め本作が全部が全部善いモノだとは思えない。
配役は良いと思う。特に弁護士役のトム・ウィルキンソンは好演。
『フィクサー』みたいな変な殺され方(暗殺)はないので安心して観れた。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 知的
  • 切ない
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