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否定と肯定 (2016)

DENIAL

監督
ミック・ジャクソン
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3.67 / 評価:586件

英国とアメリカの裁判流儀の相違は…

  • bakeneko さん
  • 2018年1月17日 20時02分
  • 閲覧数 1267
  • 役立ち度 11
    • 総合評価
    • ★★★★★

1996年に行われた“アーヴィング対ペンギンブックス・リップシュタット事件(Irving v Penguin Books and Lipstadt)”について、被告となったデボラ・リップシュタットが書いた書籍『否定と肯定 ホロコーストの真実をめぐる戦い』を原作とする映画で、第二次世界大戦中のユダヤ人のホロコーストの有無を巡って、否定と肯定の説を遡上に上げてゆきます。

“ヒトラーはユダヤ人のホロコーストに関与していない、強制収容所での虐殺は無かった”と主張している自称歴史学者:デイヴィッド・アーヴィングを嘘つきだと自書で記述したアメリカのホロコースト研究家のデボラ・リップシュタットが、アーヴィングから名誉毀損で訴えられる。アメリカと逆に被告に立証責任がある英国での裁判に臨んだデボラは英国流の裁判手法に戸惑いながら、ホロコーストの証拠とアーヴィングの恣意的な事実の曲解の論証に挑むが…というお話で、ディベート勝負でアマチュアである陪審員を自説に引き込む=弁護士のパフォーマンス勝負的なアメリカ的裁判と、正々堂々と論旨で納得させるべく相手に事前に質問内容まで提示しておく=徹底した証拠主義&論理戦が主流の英国の裁判の違いを提示している作品で、「ハンナ・アーレント」や「スペシャリスト」でユダヤ人側が採った“収容所の生き残り証言を用いた論理性よりも感情に訴える作戦”が英国では歓迎されないことがわかります。
逆に言えば、ユダヤ人のホロコーストがあった証拠を、もう一度徹底的に吟味&提示して見せて行く作品で、“収容所が徹底的に破壊され、実際に処刑された証人は生き残っていない”状況で、何を証拠に検証してゆくのか?という実証は知的興味を喚起してゆきます。

そして、ホロコースト否定論者を放置することは、ホロコーストに関して肯定と否定の2つの説があるかのように見せ、事実を著しく曲解するばかりか現在の政情にも影響を与えることを警鐘するヒロインの訴えは、差別主義や歴史の改竄が再び隆盛となっている現状に強いメッセージを提示しているのであります。

アメリカンな流儀を貫けずに葛藤するユダヤ人のヒロインをレイチェル・ワイズが、一方で英国的な冷静さと論旨で勝負する弁護士をトム・ウィルキンソンが好演していますし、何といってもいつもは小心な小市民や弱者を演じるのが得意なティモシー・スポールが、“自分が間違っているとは露ほども考えない”骨の髄までの差別論者&ホロコースト否定論者を体現して震撼させてくれます。

劇中冒頭で示されるように、ホロコースト否定論者の論拠としてよく用いられる―
1、 正確な犠牲者の数がわからないから定義できない
2、 一部の説や証人が間違っていたから全ての証拠が疑わしい
3、 被害者や告発者は賠償金目当ての嘘つき
―という論拠はユダヤ人の虐殺以外にも南京大虐殺や従軍慰安婦などの日本の戦争犯罪事象に当て嵌まることを鑑みても、他人事とは思えない問題を提起している作品で、アーヴィングも日本ならば(あのハゲの様に)言いたい放題だったのかなあ~と考えさせられる映画であります。


ねたばれ?
法廷シーンでアーヴィングは、“私は差別主義者じゃないぞ!その証拠にパキスタン人のメイドも雇っている”―と字幕ではここまでしか訳していませんが、あとに続いて“いいおっぱいしているしな!”と言っています―確かに裁判官の言うようにこいつは“天然”だなあ~

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