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ワンダーストラック (2017)

WONDERSTRUCK

監督
トッド・ヘインズ
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3.35 / 評価:251件

人生とは、思いがけずに大切なものを得る旅

  • dr.hawk さん
  • 2018年4月8日 0時35分
  • 閲覧数 980
  • 役立ち度 10
    • 総合評価
    • ★★★★★

2018.04.07 字幕 MOVIX京都


ブライアン・セルズニック原作の同名小説(2011年)の映像化作品
事故により耳が聞こえなくなった身寄りのない少年が、顔も知らない父を探す物語
監督はトッド・ヘインズ
脚本はブライアン・セルズニック


物語は2つの時間軸を交互に描くことで紡がれ、1927年をモノクロ(サイレント)で1977年をカラー(トーキー)で色分けしている

1927年、ニュージャージ州ホーボーケンに住む耳の聞こえない少女ローズ(ミリセント・シモンズ)は、家庭教師に勉強を教わっているが孤独の中にいた
彼女には憧れの女優リリアン・メイヒュー(ジュリアン・ムーア)がいて、日々彼女に陶酔していた

ある日彼女は家を抜け出して、リリアンのいるニューヨークへと向かう


一方の1977年、ミネソタ州ガンフリント湖のほとりに住む少年ベン(オークス・フェグリー)は、母エレイン(ミシェル・ウィリアムズ)とふたり暮らしをしていた
父のことを聞いても答えてくれない母
やがて母はそれを語ることなく事故で他界する
保護者のいないベンは叔母の家に住むことになったが居心地は悪かった

ある夜、生家に忍び込んだベンはそこで『ワンダーストラック』という名の本を見つけた
その本に挟まれたしおりの裏には「愛してるよ、ダニーより」と書かれていて、このダニーこそが父ではないかと思う
ベンはしおりに書かれた書店に電話を掛けたが、運悪く落雷が高圧線に落ち、ベンは感電して気を失ってしまった

ベンが目覚めるとそこは無音の世界で、彼は落雷によるショックで聴力を失ったことを知る
そしてある日、ベンはしおりの書店を探すために病院を抜け出し、ニューヨークへの深夜長距離バスへと乗り込んだ


物語の主題は「成長」

ベンは旅を通じて、父のことを知る過程で友情を学び、人生の紆余曲折を知る

ローズは兄と再会することで自分の特技を生かした職に就き、時代(万国博覧会の開催)の流れの中で人生を歩んでいく

この50年を隔てたふたりは、同じように両親の悩みと聾によって苦しめられるのだが、引用されるオスカー・ワイルドの一文を体現するかのように「空を見上げて星を探していく」のである

ふたりの共通点は「自分ではどうにもならないもの」に対して、それを受け入れていることである
両親の関係も、自身のハンデも
それらについて悩むよりも、行動を起こす
これによって「ドブの中だと思った世界は、実は自分の思い込みだった」と理解するのである


Wonderstruckとは形容詞で「驚きの念に打たれた」とか「あっけに取られた」などの意味がある

彼らにとっての「驚き」とは、家族の真相などではなく、「星を探して歩いてきた中で得たもの」である

家族の真相は衝撃的だが、幼い彼らでも配偶者の態度でなんとなく想像はできる
前のめりに生きた彼らは、転職、家族、友人などに囲まれながら、それぞれ「安息の地」を手に入れていく

この物語は「欠如→回復」の物語であり、ふたりの主人公の欠如は「安息」であり「居場所」である

だが彼らは居場所探しに奔走したわけではなく、「家族」を探して旅に出た
彼らが得た居場所はいわゆる副産物的な意味合いが強く、その居場所よりも大切な人間関係を築くことことができた

彼らにとっては、この人間関係こそが副産物であるのだが、この「ねじれ」こそが人生の面白さなのである

だから、彼らは「得たいと思ったものとは違ったものを得て、それこそが人生の驚き」になるのである


いずれにせよ、物語はうまく練りこまれており、映画としての構成も申し分ない
映像と音楽を効果的に使った演出は時系列並行の流れに沿うアイデアだった

音のない世界に生きるふたりは、メッセージのすべてを理解し合えないが、それも心は通じ合う

それはメッセージを受け取ろうと必死になって相手の声以上のものを受け取るからである

感情であったり、仕草であったり、時には会話と会話の「間」であったりする

これらは「ただ流れてくる音を拾い合うだけの会話」では得られないものである

彼らは「コミュニケーション能力」を高め「成長」した

そしてこのコミュニケーション能力の成長はやがて「進化」となる
これこそが劇中で登場する自然史博物館が意味する「地球の真理」であろう

人は何をもって「進化」してきたのか

それはベンの成長を見れば一目瞭然である


そう言った意味において、旅のきっかけが「本」であるというのは見事な暗喩だと感じた

詳細評価

物語
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