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ジュピターズ・ムーン
2018年1月27日公開無料配信

ジュピターズ・ムーン

JUPITER HOLDJA/JUPITER'S MOON

PG121282018年1月27日公開

一人旅

4.0

現代欧州の危機感をSFに託して

コルネル・ムンドルッツォ監督作。 医療ミスを犯し病院を追われた医師と重力を操る難民の青年の関わりと逃避行を描いたSF。 ハンガリー出身の鬼才:コルネル・ムンドルッツォ監督が、『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』(14)に続いて放つ「信頼三部作」の第2作目で、難民やテロリズムを背景にした現代の寓話が語られていきます。 医療ミスで病院を追われ、被害者遺族に対する賠償金を難民キャンプから難民を不法に脱出させる手数料から充当している医師:シュテルンが、国境警備隊に違法銃撃され重傷を負ったシリア難民の青年:アリアンと出逢う。アリアンが重力を操り体を宙に浮かせる能力を持つことを知ったシュテルンは彼を金儲けに利用しようと難民キャンプから外に連れ出すが、国境警備隊の隊員:ラズロが口封じのため二人を捕えようとして…というストーリーで、前作『ホワイト・ゴッド』同様に特殊な能力を有する人間を巡る寓話的ヒューマンSFが描かれます。 現代の欧州社会を取り巻く状況を反映させた作劇が特徴になっています。難民の大量流入問題や各地で相次ぐテロ事件に揺れる欧州において、市民の間で高まりつつある排他主義・保守主義そして不信に対するアンチテーゼを、居場所の定まらない=“宙に浮く難民”と彼を取り巻く人々との関わりの中に提示しています。 リリカルに表現された空中浮遊や、重力がぐるりと転回する部屋の映像が目を引きますし、旧市街の上空を浮かぶ青年と彼を見上げる人々の図は心理的な一体感に溢れています。

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