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きらきら眼鏡 (2018)

監督
犬童一利
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3.63 / 評価:208件

船橋市を舞台にしたちょっといい話

今回取り上げるのは昨年9月に公開された『きらきら眼鏡』。映画の大部分が千葉県船橋市で展開されるが、後半に主人公の明海(金井浩人)とあかね(池脇千鶴)が南房総の勝浦市を旅する場面がある。船橋市のロケで特に印象的なのは、北習志野駅と三番瀬公園であろう。
監督の犬童一利は、池脇千鶴の代表作「ジョゼと虎と魚たち」を手がけた犬童一心監督の親族かと思ったが、特につながりはないようだ。原作は森沢明夫の書いた同名小説。この人の作品は「夏美のホタル」「虹の岬の喫茶店」「あなたへ」など、映像化されたものが結構ある。

本作はららぽーと船橋のシネコンで先行公開されたという。ららぽーと船橋は1981年にオープンした大型ショッピングモールだが、オープン間もない頃に父の運転する車に乗って訪れたことがある。当時は千葉県柏市に住んでいたが、柏でもららぽーと船橋の開店は大きなニュースになっていたのだ。
ちなみにららぽーと船橋はレジャー施設の「船橋ヘルスセンター」の跡地に建てられたもので、僕は物心がつく前の幼い頃に、親に連れられてヘルスセンターに行ったことがある。プールに飛び込む巨大な滑り台をおぼろげに覚えている。

ファーストシーンは午前4時、明海が駅の仮眠室で目覚めて駅員としての勤務につく場面である。地下鉄のホームのようで、到着した電車の行き先は中野とあるので地下鉄東西線の駅かなと思っていると、北習志野駅であることが分かる。
僕はかつて北習志野駅を利用していたが、通っていたのは新京成電鉄だけで、映画に出て来た地下ホームはなかった。今は東葉高速鉄道という電車が接続しており、西船橋から地下鉄東西線に乗り入れているそうだ。北習志野駅周辺の眺めも相当変わったのだろう。

明海は25歳の若者で、同僚の駅員に弥生(古畑星夏)という可愛い女の子がいる。弥生は明海に惹かれているらしく、一度バーでデートするが、内心に屈託を抱えていた明海は弥生とまともに会話しようとしない。無反応の明海に必死に話しかける弥生が可哀想だ。
この経験で彼女は傷ついたに違いないが、心中に何らかのプラスの化学反応を生んだらしい。いつも「何月何日の新聞を失くした。大切な物なので探してほしい」と言う、頭が弱い男性(山本浩司)の訴えに親身に応対し、彼の人生の一端を知る事で、仕事に不満を持っていた弥生は一皮むけたように清々しい表情を見せる。これは本作に幾つかある心温まるエピソードの一つである。

明海があかねと知り合うきっかけは、古書店で偶然買い求めた本の中に彼女の名刺が挟まっていたことであった。僕は船橋市の古書店に入った経験はないが、学生時代に京成船橋駅近くにあったレンタルレコードの店に通い、当時流行していた洋楽アーチストのレコードを借りてカセットテープにダビングする趣味に熱中していた頃を思い出した。
あかねの勤め先はゴミの処理業者である。昔から千葉県は東京で発生した産業廃棄物を多く引き受けて来た歴史があるから、この勤め先はいかにも千葉県らしいと思った。余談だが今年9月に千葉県に上陸した台風15号の被害では、多量のゴミが発生して問題になっている。東京都は千葉県が苦境にある今こそ積極的に手を差し伸べなくてはいけないと思う。

明海とあかねがデートする三番瀬公園は、東京湾にわずかに残された自然の干潟である。晴れて空気の澄んだ日には、ここから東京湾を隔てて富士山が見えるという(劇中でも富士山が映るシーンがある)。千葉県から見える富士山・・・、これで思い出したのは小湊鉄道に乗ったときの記憶である。
鉄道が終着の市原市・五井駅に近づくと、のどかな田園風景の中で思いがけず富士山が顔を出すポイントがある。富士山と自分との間には東京湾が横たわっているのだと思うと、関東地方のスケールを地図上でなく実際に体感できたように思えたものだ。

題名の『きらきら眼鏡』というのは、物事をポジティブに捉えるという事だ。あかねの恋人・祐二(安藤政信)が癌に罹って余命いくばくも無いという現実を、少しでも明るいものにするために彼女が考えた処世術である。これで思い出すのはビートルズの「ヘイ・ジュード」である。「悲しい歌も、歌い方次第で良くなっていくものさ」という歌詞とピッタリはまっていた。
しかし私自身、実の父親を病気で亡くした経験があるが、それなりに天寿を全うしたという救いがあった。それに比べて若者の病死は悲しすぎて、どんなにポジティブに考えようとしても限度がある。あかねはどうすべきだったのか。祐二が言うようにキッパリ彼の事を忘れられれば楽だったのだろうか・・・。自分の思考がそんな出口なき迷宮にはまり込んだので、私的評価は満点ではなく★4つになった。

詳細評価

物語
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