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私はあなたのニグロではない (2016)

I AM NOT YOUR NEGRO

監督
ラウル・ペック
  • みたいムービー 72
  • みたログ 110

3.62 / 評価:95件

ハリウッド映画の裏を読むと…

  • bakeneko さん
  • 2018年8月2日 9時57分
  • 閲覧数 479
  • 役立ち度 8
    • 総合評価
    • ★★★★★

トルコやフランスに長く留まってアメリカの人種問題を俯瞰的立場から批評していた-アメリカ合衆国の小説家で公民権運動家のジェイムズ・ボールドウィンの未完成原稿『Remember This House』を基にして、暗殺された3人の公民権運動家:ドガー・エヴァース、マルコムX、キング牧師の軌跡を辿りながら、“人種差別の根幹にあるもの”を提示してゆく-ラウル・ペック監督のドキュメンタリー映画の傑作であります。

ドガー・エヴァース、マルコムX、マーティン・ルーサー・キング牧師の暗殺について書かれたジェイムズ・ボールドウィンの著作と言えば“―『通りでは名無し』(No Name in the Street)”が有名ですが、本映画の元になった未完の著作“Remember This House”も同様に、作者自身の3人との個人的な思い出やエピソードについて書かれています。

中絶した原作を膨らませて、黒人奴隷の由来から21世紀現在の状況までの歴史を俯瞰しつつ、人種差別の根幹にある人間心理まで解剖して提示している野心作で-フランス系ならではの客観的視点でアメリカ白人の深層心理を解析してゆきます。

メインプロットで語られる-有名な3人の公民権運動家の思想と結末は目新しいものではありませんが、知らない方は知識の整理に役立ちますし、黒人奴隷から形式上の人種差別撤廃までの歴史もおさらいすることができる構成になっています。

出色なのは、ハリウッド映画を題材にして人種差別の根幹にある白人側の理想と虚構を映し出してゆく引用映像で、「アンクルトムの小屋」、「模倣の人生」、「手錠のままの脱獄」、「夜の大捜査線」、「招かれざる客」、「ソルジャーブルー」といった分かり易い例から、
「駅馬車」、「Dance, Fools, Dance」、「キングコング」、「追い詰められて」、「ブロードウエイの子守唄」、「パジャマゲーム」、「昼下がりの情事」、「ア・レーズン・イン・ザ・サン」、「恋人よ帰れ」、「エレファント」…といった間接的なものまで含めて多彩な映画の中の印象操作やメッセージ的な部分が解析されています(幾つ出てくる映画が分かるかで映画ファン検定ができますな)。

そして、ジョン・ウエインやドリス・デイに象徴される“理想の白人、理想のアメリカ”と言う作られたイメージと現実との齟齬への焦燥と、
理想どおりに成功を手にすることができない負け犬白人層の残された唯一のアイディンティティ(=白人であること)への固執、
対人関係を威嚇、支配、服従でしか処理できない狭量な臆病さ
が人種差別の根幹にあることを喝破してゆきます。

本映画で提示された“差別の心理と根源”が、アメリカ白人のみならず、“過度の自民族賛美や歴史の修正解釈”、そして“周辺諸国の蔑視と差別”が蔓延している現在の日本にも当て嵌まることに気がつくドキュメンタリーの秀作で、“差別をする者は、自分自身が畏怖と劣等感の奴隷である”ことが判りますよ!


ねたばれ?
本作のナレーションは、“映画中で最も沢山”ニガー“と言った黒人俳優”=サミュエル・L・ジャクソン!(「ジャンゴ 繋がれざる者」のスティーブン執事を連想しました)―粋なキャスティングだなあ~

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