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万引き家族 (2018)

SHOPLIFTERS

監督
是枝裕和
  • みたいムービー 2,775
  • みたログ 1.5万

4.08 / 評価:13,067件

目を背けてはいけない

  • Masato さん
  • 2018年6月3日 15時03分
  • 閲覧数 12214
  • 役立ち度 190
    • 総合評価
    • ★★★★★

まず見た感想、これはパルムドール狙ってきたなといった感覚。

昨年の「三度目の殺人」からだが、是枝監督は包まれた優しさを描くよりも、隠された日本の残酷な現実を描くようになった。是枝監督特有の日常を切り取ったような映画ではあることは間違いなしなのだが、「海よりもまだ深く」などにあった監督の優しい眼差しが厳しい眼差しに変わっていた。

本作は、イタリアの「自転車泥棒」から始まるネオ・レアリズモ映画である。貧困層の人物からの視点でその国や地域の社会問題を描き出した映画だ。イギリスではケン・ローチの「わたしは、ダニエルブレイク」(パルムドール受賞)や、アメリカでは先月公開の「フロリダ・プロジェクト」などがある。同様に、本作も日本の嫌な側面と社会問題を包み隠さず、沢山描き出している。
ネグレクト、保護と誘拐の定義の曖昧さ、経済格差の二極化、無縁社会化とそれによる地域共同体の崩壊…一見感じないようで実際に起きている事実を知ることができる。日本人として目を背きたくなる問題ばかりだが、真正面から問題を見つめ直すことが必要だと教えてくれる。

本当の家族は、「血」か「時間」か。答えを出さず、あえてどっちが正しいかなどは明確には言わずに、ひたすらその複雑な気持ちを引きずりながら、劇場を後にすることになる。答えを出してしまえば、そこで考えるのをやめてしまう。だからこそ、答えは出さないようにして、ずっと考えさせるようにしているのだ。

現状と世間の知る実情との乖離が大きいのだ。ニュースで流れてくる犯罪は淡々としすぎていてただ非難することしかできない。それはそれで間違いはない。ニュースとは「真実」を伝えるものだからだ。しかし、その中立的な真実だけで片付く問題なのかは違うだろう。「どうしてそんな犯罪を?」、「どうして家族と?」そんな疑問の答えは我々には届かない。だからこそ、私たちはこの社会を一度俯瞰して見つめ直し、今起きている事象に対して真面目に考えるべきなのだろう。

血は繋がってない。家は貧しく、万引きをして、その日暮らしの生活。しかし、そこには何にも代え難い幸せがあった。純粋無垢な子ども達はそんな生活でも、幸せがあれば満たされた。大人たちも、そんな姿を見て幸せで充実していた。みんなが傷を持ち、互いに自分を重ね合わせて、その傷を無くそうとしている。そんな空間に、常識など通用しない。なにかが正義でなにかが悪など…しかし、未熟な社会が常識を押し付けてくる。二元論で片付かないのだ。

やっぱり演出が凄かった。文字で伝えてしまうと、それは映画ではなくなる。とにかく映像で伝えようとしてくる。語ることは少ないが、登場人物に降りかかる出来事に対する表情を見るだけで、その人がどんな人だったのかがよくわかる。治は祥太と同じ境遇で育ったのも、信代は百合と同じ境遇だったのも。亜紀は完璧だと思われるような家族が自分を傷つけたくなるほど嫌で、空虚で孤独な様とか。より心にダイレクトに伝わってくる。

いままで、海外の社会派映画を見てきて、こんなに自国を批判できるのかと思っていた。それを冷静に分析して、考えても、自分がその国の民ではないから、どこか他人事のようだった。でも、これは日本の現状を映し出している。この目を背きたい感覚。これが自国を批判する映画を見てきた人たちの感覚か。こんなにも苦しいのだな。この刺激が今の日本には必要なんだ。今の日本はあまりに無機質すぎる。

追記
自国の批判をするということは、それだけ誰かの反感を買うことになる。世間的な評判とは相反して、ネットではものすごい勢いで是枝監督が叩かれている。それほど、この映画のテーマは核心をついているということだろう。というか、この映画は、邦画ではあまりにも挑戦的な内容すぎて、映画をあまり見ない人の稚拙な非難が顕著に表れている。「この映画は万引きを肯定している」とか「問題提起をするだけで、何を言っているのかわからない」とか…。しようがないことなのだが、映像作品に対する考え方の未熟さと他国と比べての時代遅れ感が恥ずかしい。

2018年6月8日、福岡で万引き品を売って生計を立てていた4人家族が逮捕された実際の事件が流れた。これはフィクションではない。日本で今起きている事実なのだ。何度も言うが、「目を背けてはいけない」。

思い出したけど、リリーフランキーが城くん(祥太)を泳がせているところ。「ムーンライト」のマラーシャラアリと主人公の子と同じだった。包み込むように持ってレクチャーしているところがなんとも言えない優しさ。あの作品も疑似家族のようなもので、共通点がみられる。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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