死(恥辱)は耐え難いが恥辱(死)は耐えられる
- fg9***** さん
- 2019年6月5日 14時42分
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…『トガニ 幼き瞳の告発(2011)』、『怪しい彼女(2014)』のファン・ドンヒョク監督作品で、イ・ビョンホンの名前が見えたので観てみる。
…あらすじは、横着をして、解説の次のとおり。
『1636年、清が朝鮮に入り込み、首都漢陽を逃れた朝鮮国王仁祖(パク・ヘイル)たちは、敵軍に完全に包囲されてしまう。
厳冬の中、八方塞がりの状況で大臣の意見は真っ二つに分かれ、吏曹大臣チェ・ミョンギル(イ・ビョンホン)は和平交渉を望み 、礼曹大臣キム・サンホン(キム・ユンソク)は徹底抗戦を主張する。』
ミョンギルは、民族存続のためには恥辱に耐え抜いてでも生き抜く道を説くのだった。
外野席からは、裏切り者は斬首の刑に処せとの野次も飛び交うが、彼の信念は少しも揺らぐことなく、先ずは、王を始めとした民の命こそが大事であると頑として譲らないのだった。
一方、サンホンは、生き恥を晒すよりも誇りをもって戦うことを説くのだった。
冒頭、このサンホンの非情さが描かれている。
道案内をしてくれた老人を敵に益をもたらさないように切って捨てたのだった。
この老人には孫娘がいて、お祖父ちゃんを殺されて1人ぼっちになってしまったので、後日、城に迷い込んでくるのだった。
その娘をサンホンが後ろめたさ?からか、保護者の役を買って出るのだった。
サンホンとこの娘との和みある日常の遣り取りは、冒頭のサンホンの情け容赦なし、交戦的な考え方にも首肯すべきところがあり、それなりに傑出した人物であることを伺わせる。
そんなサンホンの人柄にミョンギルも一目置いていることが解かり、サンホンもまた、正反対な意見ながらミョンギルの為人に敬意を表してもいるのだろう。
そんな2人が相反する立場で丁々発止の議論を戦わせるので、緊迫感で満ち溢れていたな。
2人の意見にジッと耳を傾ける国王仁祖も単なる虚け者ではなかった。
国王にとってミョンギルの意見など屈辱以外の何物でもなく、側近が激怒するに同調して斬首の刑に応じるのかと思ったが、王は王なりに2人の意見に苦渋を浮かべながら懊悩するのだった。
こんな会話劇だけでも十分に面白かったが、流石はファン・ドンヒョク監督だ。
随所に激しい戦闘場面を盛り込んだり、城壁を警護する庶民の遣る瀬無い心情を吐露させたり、男気のある鍛冶屋(コ・ス)に密使を命じたり、この鍛冶屋の弟分が戦闘で倒れ伏すという悲劇も織り込まれている。
以下、ネタバレかな……。
で、国王は、どちらの戦法(意見)を選択したのだろうか……。
ミョンギルの「死は耐え難いが、恥辱は耐えられる」を選択するのだった。
国王は平民の服を着せられ、清の皇帝の前に額づき、「三跪九叩頭の礼」を強いられるのだった。
これまで人様に頭を下げたことのない国王が、9回も頭を地面に擦り付けて清に忠誠を誓うのだった。
しかも、これ以降も、清の使節を迎える度に「三跪九叩頭の礼」を義務付けられるのだった。
ミョンギルは、自分の意見が通ったものの、国王の屈辱に耐える姿を目の当たりにして、溢れ出る涙を抑え切れないのだった。
一方のサンホンのその後は、語るには及ばないだろう。
「恥辱は耐え難いが、死は耐えられる」に決するのだった。
一番偉い人が土下座しての幕引きなので、韓国では不評だったらしいが(黒歴史なのかな?)、俳優人の鬼気迫る演技は非常に見応えがあった。
紅一点のお嬢ちゃんもお上手で健気に頑張っていたし、坂本龍一の音楽も繊細かつ重厚で本作にマッチしていたっけな。
『トガニ 幼き瞳の告発』、『怪しい彼女』とは全く毛色の違う作品を撮ったファン・ドンヒョク監督の才能に敬意を表して、4.2点といったところかな。
(メモ 総レビュー数:3368件、2019年度198作品目)
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