歴史と生き様と音色で穏やかな気持ちに
- chanrinsham さん
- 2020年9月12日 19時28分
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2016年のBVSCさよならツアーが主題ではあるが、過去にさかのぼってBVSCの主要メンバーを深堀する内容が中心。
キューバの激動の歴史を垣間見つつ、決して平たんではない人生を歩んできたはずのメンバーの前向きな様子を見ていると、穏やかな気持ちになれる。
「苦悩の歌なのに、なんでみんな一緒に歌ってくれるんだろう。」
というオマーラのさりげない感想が響く。
キューバ音楽「ソン」には、アフリカから連れてこられた奴隷の子孫としてのアイデンティティが込められているようだ。ブルースみたいなもんだろうか。日本人の私には、そこまで感じ取れる感性はない。
CD発売後のアムステルダム公演の練習で、コンパイ・セグンド(「第2声の仲間」)が音が違うと言ってもめている様子なども映し出される。そりゃ、きれいごとだけじゃないよね。
今は亡きイブラヒム・フェレールが極貧で鳴かず飛ばずだったバックコーラス時代、オマーラと一緒にステージに立った当時のレア映像などが興味深い。12歳で死別した母の形見である杖をずっと持ち歩くイブラヒムは、内向的だが、一旦歌い出すと優しくて素晴らしい歌声だ。
1950年代、キューバ音楽は黄金時代を迎える(そうだったのか!)。ソンは、ハバナとは逆方向、南端のサンティアゴ・デ・クーバが発祥の地。ここは親米バティスタ政権を打倒したキューバ革命で、フィデル・カストロが攻撃した、キューバ革命発祥の地でもある。
長ーいカストロ政権下でも、ソンは無事?細々と?生き残ることができた。そして2015年、ついに半世紀ぶりにアメリカと国交回復、なんとBVSCはホワイトハウスでオバマ大統領の前で演奏を行う。
2000年代初めにオリジナルメンバーが次々に天寿を全うされても、過度に感傷的にならず、新しい世代に引き継がれていく予感を感じさせるのが良い。
なお、監督のルーシー・ウォーカー、知らなかったけど、東日本大震災後を題材にしたショートフィルムも撮っているようだ。
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