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ハナレイ・ベイ (2018)

監督
松永大司
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3.21 / 評価:259件

変換スィッチ

  • yab***** さん
  • 2019年7月6日 11時09分
  • 閲覧数 252
  • 役立ち度 0
    • 総合評価
    • ★★★★★

それぞれの喪失感がある。それはやり過ごすこともできる。拭いきれない時は、他人と話して紛らわすこともできる。しかし、そのあと独りになった時、喪失感は心の襞にぴったりと張り付いてくる。人それぞれ喪失感と向き合わなければならない。

 サチは、毎年息子タカシの命日の時期に、ハワイの海岸でチェアに座りながらひとり本を読む。タカシは、サーファーの最中にサメに襲われたのだ。彼女は墓参りをしない。息子の形見の手形も飾ることはしない。ひたすら海を見つめていだるだけ。そして本を読むだけ。 

 彼女が、命日の時期だけピアノを弾くハワイのジャズバー。そこの常連の元米海兵隊の兵士。山口の岩国基地にいたことがあるという。彼の戦争に対する喪失感。酒で紛らわし、日本人の若者に当たり散らす。お前らは何もわかってないと。
 タカシの弔いの世話をしたハワイの葬儀屋の老婆。銃で撃たれて亡くなった夫は、勲章をもらったと言う。だが、彼女は、かけがえのない物を喪った同志として、優しくサチに言う。
「(タカシ)の手形はその何倍もの価値があると思うわ」
 
 そして、サチが出会った二人のサーファーの若者。タカシと同じくらいの年頃。サチは、忘れかけていた母親の口調を彼らにぶつけていく。それによって、喪失感が一瞬止まる。
 彼らに深刻さはない。喪失がないわけではない。しかし、彼らは、心の中に喪失を即座に切り替える変換スイッチを持っている。若さゆえである。彼らは片足のサーファーを海岸で見かけたという。彼らの変換スイッチの合間については消えるタカシの幻・・・。当惑するサチ。

 僕の心に残った印象的なワンシーン。サチは、帰国後、街のカフェでばったりサーファーのひとり高橋と出会う。彼女を連れている。彼女が席を立った時、サチは高橋に母親口調で言う。
「女の子とうまくやる方法は3つしかない。相手の話を黙って聞く。着ている服を褒める。できるだけ美味しいものを食べさせる」
 そのサチの言葉を、意外にも高橋はメモに書き留める。そしておもむろに言葉を発する。
「にわとりと同じで3歩歩くと記憶が全部飛んじゃいます。なのでアイシュタインと同じ書き留めます。忘れっぽいことは問題ないんです。忘れることが問題なんです」
 日本のひとりの若者なりの喪失感に心が微妙に揺れる。

詳細評価

物語
配役
演出
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音楽

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