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あなたはまだ帰ってこない (2017)

LA DOULEUR/MEMOIR OF PAIN

監督
エマニュエル・フィンケル
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  • みたログ 60

2.72 / 評価:47件

妻の務めを果たし、女へと戻った深い苦悩

  • dr.hawk さん
  • 2019年3月22日 1時43分
  • 閲覧数 916
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

2019.3.21 字幕 テアトル梅田


2017年のフランス&ベルギー&スイス合作の映画
原作はマルグリット・デュラス『苦悩(La douleur)』
ゲシュタポに逮捕された夫を待つ妻の葛藤を描いた自伝的ドラマ
監督&脚本はエマニュエル・フィンケル


物語の舞台は1944年、ドイツ占領下のフランス・パリ

主人公マルグリット・デュラス(メラリー・ティエリー)のモノローグ「私はこの日記を、二冊のノートの中で見つけた。私にはこのノートを書いた記憶がない」にて物語は幕を開ける

マルグリットは若手のジャーナリスト兼作家で、夫ローベル(エマニュエル・ブルデュー)とともに反ナチスのレジスタンス運動に参加していた

だがローベルはゲシュタポに逮捕され行方知れず
マルグリットはローベルの為に、と衣服を入れた小包を持って役所を訪れた

再三にわたって夫の様子を伺うマルグリット
その日はローベルを逮捕したというピエール・ラビエ(ブノワ・マジメル)に声を掛けられる

マルグリットは小包を託し、それからふたりは頻繁に会うようになる

マルグリットには夫が逮捕される前から愛人のディオニス・マスコロ(ベンジャミン・ビオレ)がいて、彼はラビエと会うことを怪訝に思っていた

情報を引き出そうとするマルグリットの行為を「危険だ」と断罪し、ふたりを影で見守るようになる

マルグリットに興味を示すラビエはやがて「協力すれば夫の移送はなくなるかも知れない」と持ちかけた


物語はマルグリットの日記をベースにした展開を見せ、時折彼女のモノローグが挿入される

この小説はこの出来事があった1944年の40年後に出版されており、当時はその衝撃的な内容に世間は揺れた

主題は「愛」であるが、不在者に対する真摯な想いと並行して存在する、傍で見守られ感じる愛、そのふたつに揺れる「女」を描いている

史実によればフランスがドイツに占領されたのは1940年のフランス侵攻とフランス第三共和政府崩壊によるものである

その直後に逮捕されたとするならば、ロベールは4年ほどの間、捕虜として扱われていたことになる

その間に愛人であるディオニスとの距離は縮まり、またラビエという人物に翻弄されていく

そして、帰ってきてほしいという想いと同時に帰ってきてほしくないという感情が湧き起こる

映画ではそんな相反する想いに揺れる自分を客観視するような視点が描かれていく


そして物語の結びであるモノローグにて、マルグリットの胸の内が晒される

赤痢を患い瀕死だったロベールの回復を待ってからの言葉

その告白に対し、優しげな瞳を浮かべるロベールは印象的で、空白によって妻から女へと変わってしまったことを受け入れているようでもあった

彼女の略歴によると、1946年にロベールと離婚し、ディオニスと結婚、ふたりの間にジャンという息子を授かっている

この映画は当時の想いを綴った日記で、それらをまとめた私記として隠された記憶として出版されている

どの時点で出版を考えたのかは定かではないが、80年頃にヤン・アンドレアとの関係が濃厚になったあたりからだろうか

劇中の年齢は30歳、出版は70歳なので、ある意味人生の整理を始めた頃なのかも知れない


いずれにせよ、鑑賞後の率直な感想は「小説の朗読を聞いているよう」だった

睡眠不足でトライしたら確実に寝てしまう映画であり、物語の抑揚はほとんどない

ラストの告白の衝撃度はどれだけ物語に没頭し、ローベルへの愛を感じたかによるだろうが、主演のメラリー・デュラスの細やかな演技は見応えがあるので、文学的な素養が好きなタイプにとっては絶賛の映画となりそう

ただしエンターテイメント性は皆無に近いので、深みが読み解けなければ辛い2時間になるのではないだろうか

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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  • 知的
  • 切ない
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