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こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話 (2018)

監督
前田哲
  • みたいムービー 732
  • みたログ 4,638

3.88 / 評価:3841件

チャンスを得るためにわがままを

  • bar******** さん
  • 2020年8月17日 14時36分
  • 閲覧数 2140
  • 役立ち度 8
    • 総合評価
    • ★★★★★

こんな夜更けにバナナかよ。

いい話だったと思います。

確かに、主人公の鹿野は、結構きわどい発言をしていて、勘違いされるキャラクターになっていると思うんですね。

低評価がつくのもしょうがないというか、ちょっと怒られてもいいのかなっていうキャラクターですよね。それを適切なタイミングでフォローすることが、作品においてはできていなかったかなという印象。

ただ、自分は、鹿野を最低な人間だとは思わなかったです。ムカつくことはムカつきますけどね。

むしろそれでいいんじゃないかなって。

障害者だから、世話をしてくれる人に常に感謝しなくちゃいけない、っていうのは、理想論であって、障害者も人間なんだから、結局は自分をそのまま表現するしかできない。彼は病院に入れられて、そこが苦しくて逃げだしてきたっていうバックストーリーがあって、自分でボラ(ボランティア)を集めたっていう過去もある。

そこで鹿野が思ったのは、「生きたい。普通に生きたい」という気持ちであって、それを相手に伝えないとだめだ、たとえそれが傲慢に見えても、相手に失礼になっても、そこを変えると自分はおかしくなってしまう、ということ。もしそれをやめたら、病院のベッドでただ死を待つ毎日になる。

そこを変えたいという気持ちは、今までにない新しいものだと思います。でも彼は、作中で結構きわどい発言を繰り返すので、反感を持つ人がいて当然です。

というか、人間なんだから、誰かを怒らせることもあるし、正論が返って来ることだってある。失敗しちゃいけないわけじゃないんです。失敗を恐れて閉じこもってばかりいるのがいけないと言いたいんだと思います。鹿野は何より「諦める」ことを恐れます。そこが鹿野の良いところです。

ボラがあんなに鹿野を慕っている理由とか、ヒロインである美咲が鹿野に愛情を持っていく理由とかが、分からないっていうのは、もう当然というか、自分も分からないです正直。でも分からないのっていうのも当たり前なんですよね。好悪の感情って、その人独自のものだったりするし、性格が良くてイケメンだったら誰でも好きになるかと言ったら違ったりするじゃないですか。弱点がある人の方が好きっていう人もいます。世話を焼いて行くうちに「可愛い」って思ったりとかね。

まあ、そこまで考えて制作していたとは到底思えないんですが、自分はその辺はスルーしちゃいました。

鹿野は「障害者とボラは対等」と言いますけど、それに反するような発言をしている時も結構あります。それは鹿野の中でどういう根拠があるのか分からないですが、まあ「言っていることと違うだろ」となる視聴者はいて当然だと思います。

でも彼は自分を「障害者」だと感じたくなかったんだと思います。「障害者=普通の生活を送ることができない人」「障害者=病院のベッドで寝ていなくてはいけない人」という意味で、彼はそう感じたくなかったんだと思います。なぜならそれが嫌だから。「嫌だ!自由にさせろ!」という権利があっていい。それが大きな代償を伴うものであったとしても、命を懸けてそれをやる。

この映画は、それを伝えようとしているとともに、健常者に対しても、自分の言いたいことは言っていいし、やりたいこともやっていい、それを遠慮してやらなかったり、「いい人」になるために何かを諦めるようなことがあるのは、もったいないんじゃないか、人生は有限なんだから、ということを伝えようとしているんだと思います。

もちろん現実は、もっと厳しいかもしれません。鹿野があのような生活を送っていたたのも、幸運だったからかもしれません。もし障害者に鹿野のように生きることを勧めているとしたら、これはとんでもない映画だということになります。

だから「全員わがままになれ」とは自分は思わないんですね。だとしたら謙譲の美徳って何ですか? って思うんです。譲ることって偉いと思います。だから「わがままになれ」っていう人には反論します。

でも、わがままを言っちゃだめっていうのも違いますよね。

その適切な距離感を計っていくべきだと思うんですね。鹿野っていう人間も、最初から最後まで疑問なく過ごしていたわけじゃなくて、色んなことを探りながら生きていたんだと思います(だと信じたい)。人生は探り探りです。それ一つで人生がベストになる真理なんて存在しないと思います。だから悩みが尽きないまま、他人とどう付き合って行くか、未来に向けてどう動いていくかを考え続けていく人が、一番すごい人だと思います。

この映画はすごく考えさせられる映画です。でも「鹿野のようになりなさい」と言っているわけではない。もしそうだとしたら、とんでもない映画ですよね。さっきも言いましたけど。自分はそう思ってほしくないかなって。ただ何かしらのヒントを得られたら、それでいいんじゃないかって思っています。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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  • コミカル
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