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500ページの夢の束
2018年9月7日公開

500ページの夢の束

PLEASE STAND BY

932018年9月7日公開

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4.0

良心とスタートレック愛に満ちた作品

自閉症スペクトラム障害の施設で暮らす少女が、スタートレックの新作シナリオを書き上げ、コンテストに応募するために、サンフランシスコのマーケット通りからLAのパラマウント映画まで一人で旅する過程を描く。 タイトルのPlease stand byとは、主人公がかんしゃくを起こして自分の感情をコントロールできなかったときに、自分自身に落ち着くように言い聞かせる合言葉だ。またスタートレックで、転送装置を使ってワープするときのアナウンス音声「待機ください」でもある。 ではなぜスタトレなのか?福祉施設の世話人が、「何がそんなにいいの?」と不思議がる。 But why does she find it so fascinating? That is what I do not get. すると彼女の息子が「スタートレックの主人公も自分自身の感情をうまく扱えないからじゃないの」と答える。 He has trouble dealing with his emotions. そう、ジムカークはけんかっ早くすぐにかんしゃくを起こすし、ヴァルカン星人との混血児スポックは理屈っぽくて頭が固く、みんなとうまくコミュニケーションが取れない。スタトレの主人公二人ともコミュ障気味なのである。 そしてジムカークとスポックのギクシャクしながらも前進する関係が、本作の主人公姉妹の心理的距離に重ね合わされる(主人公の姉はたまたまスタトレ新シリーズ「イントゥ・ダークネス」の美人科学者のお姉様)。 姉 You said you wanted to show them. 「みんなに脚本を見せたかったって言ってたわよね。」 妹 I wanted to show You. 「姉さんに見せたかったんだよ。」 もちろん多くの人に認めてもらえればうれしいけど、自分にとって本当に大事な一人だけにわかってもらうことが重要だったりする。 主人公演じるダコタ・ファニングの演技はリアルだが、鬼気迫る感じはなくて安心して観られるヒューマンドラマになっている。最初のほうに出てくる施設の自閉症スペクトラム障害の皆さんは、本人役のようだ。 映画としての完成度はそんなに高くないかもしれないが、こういう人間の温かさを素朴に表した良心的な作品を見ると救われる気持ちだ。 Captain, there is one logical direction in which to go: Forward. 「船長、論理的に進むべき道は一つ。前進あるのみです。」

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