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ブレッドウィナー (2017)

THE BREADWINNER

監督
ノラ・トゥーミー
  • みたいムービー 81
  • みたログ 53

4.25 / 評価:36件

物語の持つ力

  • bakeneko さん
  • 2020年3月10日 7時55分
  • 閲覧数 201
  • 役立ち度 2
    • 総合評価
    • ★★★★★

カナダの作家で平和活動家でもあるデボラ・エリスが、実際にパキスタンの難民キャンプでアフガニスタンの女性や少女に取材を重ね聞き取った話をもとに纏め上げた児童文学「生きのびるために」を、『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』『ブレンダンとケルズの秘密 』などの良作を発表しているアイルランドのアニメーション作家:ノラ・トゥーミーが映像化したもので、タリバン最盛期の内戦が続くアフガニスタンで父親を連れ去られた娘の勇気と行動を、彼女が幼い弟に語る創作童話の主人公の冒険と並行して語ってゆきます。

2001年アメリカ同時多発テロ事件直後のアフガニスタンの首都カブールはタリバンの勢力下にあり、婦女子の単独外出や勉学は厳しく禁じられていた。生活の為に市場に出て元教師で戦争で片足を失った父親の手紙の音読や代筆業を助けている次女の11歳のパヴァーナには、母親と姉と幼い弟が居たが、ある日父親がイスラムの教義に反したと密告されて連れ去られてしまう。女子のみとなって生活手段が断たれた窮状を打破するために、パヴァーナは髪を切り男の子に変装して市場で父親の仕事を継続して(ブレッドウィナー=稼ぎ手として)家族を養いながら父親を収監されている刑務所から救出する計画を立てるが…というお話で、現実の過酷なサバイバルの描写と並行して、パヴァーナが弟に話して聞かせる少年の冒険譚が映し出されてゆきます。

過酷な現実を、主人公の子供が想像力で創り出した世界に勇気づけられることで凌駕してゆくジュブナイルとして、-「ネバーエンディングストーリー」、「パンズラビリンス」、「ゲンと不動明王」、「オーガストウォーズ」に連なる良作で、切り絵アニメーションで語られる冒険譚はアニメーション童話の根源的な魅力が漲っています。
一方でアメリカの侵攻が始まるアフガニスタンの状況も克明に表されていて、上空を飛行する戦闘機や爆撃された街の炎、慌てて街から戦地へと向かうタリバン…が緊迫した状況を再現しています。
女性監督らしく、ヒロインを始めとした女性の勇気と忍耐を共感を持って描いていて、幼児のかわいらしさにも母性的な視点が光っていますが、自分勝手な男たちの描写の中で唯一亡き妻を想い身を挺してヒロインと父親を助ける寡黙な男の献身に男性への一縷の信頼も見ることが出来ます。

ジュブナイル+アニメーションだからと言って看過せないー過酷な状況での人間の勇気を真正面から描き切った良作で、ヒロインが非力&性別詐称しながらタリバンと渡りあうサスペンス&アニメーションの色彩の美しさも見事ですよ!

ねたばれ?
ヒロインに手紙を読んでもらう男の亡くなった妻の名前“ハウラ”は英語の“オーラ”のことです。

おまけ―同じタリバン制圧下のアフガニスタンを描いたアニメーションの紹介を…
公開処刑って、サッカーの前座なんだ!
「カブールのツバメ:Les Hirondelles de Kaboul」(2019年 フランス、ルクセンブルク、スイス合作 82分)監督・脚本:ザブー・ブライトマン、監督:エレア・ゴべ・メヴェレック 声のキャスト:ジタ・アンロ、スワン・アルロー、シモン・アブカリアン、ヒアム・アッバス

タリバン制圧下の1998年のアフガニスタンの首都カブールを舞台にした“抑圧社会ドラマ+脱出サスペンス”の力作アニメーションで、女子監房の看守である戦傷軍人:アチク、その病気の妻:ムサラットの夫婦と、嘗てカブール大学で学んで結婚した歴史教師のモーセンと元美術教師のズナイラ夫婦の運命が、タリバンの原理主義勢力支配下で交錯してゆく様子を絶望的なサスペンスの中に映し出してゆきます。

徹底的な男尊女卑や笑うことも許さない原理主義の恐怖と軍政の野卑性が強烈なサスペンスとなっていて、同じくタリバン勢力下の少女の懸命なサバイバルを活写した「ブレッドウイナー」と同様に“巨悪に対する非力な者の反抗”で手に汗握らせてくれます。

厳しい環境下での連れ添った中年夫婦のお互いを思い遣る気持ちと若い夫婦の激情的な恋の双方を描いて、フランス映画らしい愛についての考察も浮かび上がらせている作品で、最近の流行りであるCGや細密画面の正反対の水彩画の様な簡素なアニメーションだからこそ極限状況を直視できるようにしている佳作であります。

ねたばれ?
1、どうやって自画像を描いたのだろう?
2、騒ぎ立てなかったら誰も気が付かなかったのに…あんたも失脚だよ!(ざまあみろ…)

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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