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ブレッドウィナー (2017)

THE BREADWINNER

監督
ノラ・トゥーミー
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4.29 / 評価:38件

解説

第90回アカデミー賞長編アニメ映画賞ノミネートをはじめ、世界各国の映画賞や映画祭で評価されたアニメーション。タリバン政権下のアフガニスタンで、11歳の少女がタリバンに連れ去られた父親を捜そうとする。監督は第82回アカデミー賞長編アニメ賞にノミネートされた『ブレンダンとケルズの秘密』などのノラ・トゥーミー。『マレフィセント』シリーズなどのアンジェリーナ・ジョリーがエグゼクティブプロデューサーを務める。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

タリバンが支配するアフガニスタン。荒廃したカブールの町で生活している11歳のパヴァーナは、足の不自由な父親が話してくれる、アフガニスタンの歴史を伝説に見立てた物語を楽しみにしていたがある日、父親がタリバンに連行されてしまう。タリバンは女性だけで外に出ることを禁止しているため、残された家族は働くことも食料を買うこともできない。パヴァーナは家族のために父親を捜そうと決意し、長かった髪を切って少年に変装して町に向かう。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)Cartoon Saloon
(C)Cartoon Saloon

「ブレッドウィナー」過酷な現実を乗り越える物語の力

 人はなぜ物語を必要とするのだろうか。歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリは著書「サピエンス全史」で、人類を地球の支配者たらしめた原動力となったのは、虚構を信じる力にあったと説いた。例えば、勇敢に戦えばヴァルハラに行けると思って死にに行けるのは人間だけ。そこにないものを信じる力はあらゆる文明を発展させる原動力となってきた。実現するのかわからない将来の夢に向かって努力できるのも、そんな虚構を信じる力の産物である。

 本作は、タリバン政権下に生きる少女とその家族の苦難を描く。タリバン政権の信じる虚構は人々にとってあまりにも辛く厳しい現実を生み出している。口答えしただけで鞭で打たれ投獄される。女性は全身をヒジャブで覆い、単独で外出しただけで罪となる。戦えない人間は射殺される。

 そんな過酷さに対抗するにも物語が必要だ。主人公の少女は物語を語ることを得意としている。それは幼い弟を喜ばせ、自身も奮い立たせる原動力となる。一家の大黒柱の父が逮捕されてしまい、女と小さな弟だけが残された一家を救うために、少女は男装して少年になることを決意する。虚構は人を残酷にもするが勇敢にもするのだ。

 女性の自由が著しく制限されるアフガンでは娘を息子として育てる「バチャ・ポシュ」という風習がある。イラン映画「オフサイド・ガールズ」は、サッカー観戦を禁じられている少女たちが男装してスタジアムに潜り込む姿を描いている。本作にも長年男装している同級生が登場するが、彼女たちは決して珍しくないのだ。

 少女の語る冒険物語の少年のように、彼女は少年となることで初めて一人で外出、労働、買い物できる自由を手に入れる。それは彼女にとって冒険である。そして、その冒険の最大のクエストは囚われた父を救うこと。そのために奮闘する彼女は、彼女自身が語る物語の少年と自分を重ねてゆき、困難に立ち向かう。そんな物語の本作もまた、世界中の人々に生きる勇気を与えるに違いない。(杉本穂高)

映画.com(外部リンク)

2019年12月19日 更新

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