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愛しのアイリーン
2018年9月14日公開

愛しのアイリーン

R15+1372018年9月14日公開

たーちゃん

4.0

ネタバレ生と性

コメディの形をとりながらものすごいブラックな表現があって、作品としてはとても見ごたえのあるものでした。 タイトルの「愛しのアイリーン」ということからも、フィリピン女性との恋愛ストーリーは想像していましたし、最初の方の岩男(安田顕)の生活から見ていても、おそらく嫁の来ない独身男がどう嫁をもらうのかというものかと想像できていました。 ストーリーの中でこの結婚は売春と同じではないかと言われるシーンがあります。 事実岩男はフィリピンで何人かの人とお見合いをしますが、言葉すら通じません。結婚紹介の男に関しても女性をあてがう女衒のようで、そこには恋愛感情もなにもありません。 男が女性を見て、結婚したいかどうかという事が一番です。 もちろん女性にも良いかどうかを聞きますが、おそらく彼女たちには拒否する事はないでしょう。それは脅されているとかではなく、自分が結婚する事によって家族を助けたいと思っているからです。 その頃のフィリピンはとても貧しく、嫁となるアイリーン(ナッツ・シトイ)の家族も父親が不在で何人もの子どもたちを食べさせなければならない。日本人と結婚する事によって、その家族にお金がはいり、生活が助かるというのです。そして男性の義務ではないにしろ、毎月の仕送りも期待されて家族たちの幸せのために日本にお嫁に来るのです。 そこで言葉が通じないところから、お互いに距離を縮めて本当の夫婦になっていく。 そんなストーリーなのかと思っていました。 それが後半からびっくりする転換になっていきます。 アイリーンが偶然フィリピンパプのお客さんとして知り合ったヤクザの塩崎裕次郎(伊勢谷友介)の存在です。彼はフィリピンから女を買い付け、日本で売春をさせるような仕事をしています。 アイリーンは自分はお嫁に来たと言いますが塩崎は売春と同じだと言います。 岩男への思いがない事を指摘されたような気がしてしまいます。 岩男の家では姑のツル(木野花)が外人のお嫁さんを認めていない事を知った塩崎は、アイリーンを岩男と別れさせ自分に売春婦として任せるように伝えます。 ツルとしては岩男には真嶋琴美(桜まゆみ)と見合いをさせ、日本人のお嫁さんを迎え入れたいと思っていました。 ヤクザのいいなりにはならないと塩崎はアイリーンを連れ出そうとしますが、それを阻止しようとします。それを無理やり車に乗せ、誘拐する塩崎を岩男は追いかけます。 そして岩男は塩崎を射殺してしまうのです。 岩男が殺人を犯してしまう事で全く、映画のどこかほのぼのとしているコメディ要素は吹き飛んで、犯罪ものに形を変えていきます。 そこでも岩男はアイリーンにカードの暗証番号を教えて、フィリピンに帰るように伝えます。しかし、アイリーンは岩男を守ると言って、死体を埋めたあと家に帰ります。 この時に初めて岩男とアイリーンは結ばれますが、感動的でもあります。 性の描写のひとつひとつがないようであるようなうまいところを描いているなと思いました。 源造とツルの間では「熱海」が今日夜の営みをしようという暗号だったという事。 アイリーンが岩男との関係を拒むので、アイリーンの寝顔を見ながらオナニーする岩男。 車の中で寝てしまった琴美のスタートを上げてパンティーを見ながらオナニーをする岩男。 岩男とアイリーンはその後、セックスをすると塩崎を思い起こしてしまい、セックス中にアイリーンの顔に吐いてしまったり。 岩男はずっと手を出す事が出来なかった吉岡愛子に殺人を犯してもうあとがないからと、職場のトイレでセックスを迫ります。 「あとがねぇんだ。やらしてくれ」そのあとで「おいで」といって受け入れる愛子、色っぽいです。 でもそれは先輩が言っていた通り愛子は絶頂を迎えると潮を吹いてしまう子でした。岩男のズボンがおしっこを漏らしたようにビショビショになってしまいます。 金のために職場の好きでもない主任と関係をもつ岩男。 琴美は岩男がオナニーをする姿を想像して、オナニーをするようになったといってきます。雪道で下着を下ろしここでやってみせるようにいう岩男です。 殺人を犯したあとの岩男とアイリーンの関係はおかしくなっていました。優しかった岩男は全く優しくなくなり、アイリーンは何のために自分がいるのかわからなくなってきます。 努力はするものの言葉が通じないというのは、関係性までもおかしくしていきます。 あとは何と言ってもラストでしょう。 主人公の岩男が亡くなってしまうなんて、びっくりです。 雪の中の岩男の死体は本当に死んでいるようでした。 その後それを知ったツルが発狂のようになってしまい、自分の事を姥捨てをするようにアイリーンに頼みます。 アイリーンはツルを背負って雪山に行きますが、ツルに助かってほしいと思うアイリーンでした。そしてアイリーンのお腹に岩男の子がいる事を聞かされます。 ツルは生きようと再びアイリーンに背負わされ家路にかえりますが、その途中で亡くなってしまいます。その時には岩男を生んだ時のことを思いだしながら。ツルも姑にいじめられながら育ったのでした。 田舎を舞台にした生と性がきちんと描かれた良作だと思います。 この中ではツル役の木野花さんの芝居が抜群に良いです。閉鎖された農村で自分の愛する子に何とか幸せになって欲しいと思う母親。そのためにアイリーンアイリーンを虫けらと呼び、辛くあたり、嫌な姑を演じています。 岩男役の安田顕さんのだらしなさ、アイリーン役のナッツ・シトイさんの健気に頑張る姿が相まって田舎の閉塞的な家族関係が表現されていたと思います。

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