ここから本文です

大いなる遺産 (2012)

GREAT EXPECTATIONS

監督
マイク・ニューウェル
  • みたいムービー 3
  • みたログ 24

3.16 / 評価:19件

若者に託す希望

  • TとM さん
  • 2020年1月9日 12時21分
  • 閲覧数 435
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

チャールズ・ディケンズによる名作「大いなる遺産」。私が初めて「大いなる遺産」の存在を知ったのは、今作ではなくアルフォンソ・キュアロン監督版だ。
初めて観たとき、何でこの映画が「大いなる遺産」というタイトルなのかピンと来なかったのだが、原作が「大いなる遺産」なんだから、タイトルが「大いなる遺産」なのは当然のことだったわけだ。

キュアロン監督版「大いなる遺産」は好きな映画で、私の中で特別な思い入れのある映画なのだが、今作は最もディケンズの原作に忠実だ、ということで食指が動いた。

今作品の原作はディケンズの作品群の中でも後期の作品に該当し、鋭い批評眼によって描き出される時代の空気が特徴的だ。
キュアロン版が舞台を現代のアメリカに移し、主人公ピップ(キュアロン版ではフィン)とエステラの恋愛物語を中心としているのに対し、今作品ではそれこそ原作に忠実に、社会変革の波に取り残された者や道を踏み外した者の失意と、社会的価値観にとらわれない人間の持つべき善意が描かれている。

非常に興味深いのは、「大いなる遺産」というタイトル。原題Great Expectationの訳なわけだが、expectという単語が含まれていることからもわかるように、財を遺すものが「期待」をかけている。
これは若く賢い存在であるピップに、産業革命という背景を利用し、新しい価値観で彩られる変革後の世界に羽ばたいて欲しい、という期待感である。

ピップは何者かが自分に遺した財産を受け取り、田舎の貧乏鍛冶屋であることを良とせず、ロンドンで紳士として生活を送ることを選択する。
エステラに相応しい男性になるための贈り物を受け取った、と考えるのだが、実際にピップを最後まで支えてくれたのはハビシャム夫人でもジャガーズ弁護士でもマグヴィッチでもなく、労働階級で学も金もない伯父のジョーなのである。

身も心もボロボロになった時、何もないけど側にいてくれる。貧しくて、楽に生きてはいけないけど、いつでも受け入れ応援してくれる。
そんな普遍的で流行り廃りに左右されない温かさが、無価値だと思っていた田舎の鍛冶屋にはあったのだ、という事にピップが気づき成長することがこの作品の醍醐味だ。
それ自体は(古いんだから当たり前だが)新しいテーマではないが、ピップが自分の実体験として、複数の価値観が支配する世界を経験していく様を細やかに描いているところが「大いなる遺産」の最大の魅力だろう。

現代社会でも、いやどんな時代でも充分に普遍的な失意と希望の物語。派手さはないが物語の持つ魅力を描き切った良作だ。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 未登録
このレビューは役に立ちましたか?
利用規約に違反している投稿を見つけたら、次のボタンから報告できます。 違反報告
本文はここま>
でです このページの先頭へ