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モダンライフ・イズ・ラビッシュ ~ロンドンの泣き虫ギタリスト~
2018年11月9日公開

モダンライフ・イズ・ラビッシュ ~ロンドンの泣き虫ギタリスト~

MODERN LIFE IS RUBBISH

PG121042018年11月9日公開

Dr.Hawk

2.0

ネタバレアーティストとしての彼は死んでしまった

2018.11.22 字幕 シネリーブル梅田 2017年のイギリス映画 ロックバンドでビッグになる夢を見る青年と、それを支える女性とのラヴロマンス 原題『Modern Life is Rubbish』は直訳すると「くだらない生活」 イギリスのオルタナティヴ・ロックバンドであるブラーが発表した(1993年)2ndアルバムのタイトルでもある 監督はダニエル・ジル 脚本はフィリップ・ガウソーン 主人公リアム役のジョシュ・ホワイトハウスはインディーズバンド「More Like Trees」にてリードボーカルを担当 物語は主人公リアムとその彼女ナタリー(フレイア・メーバー)の日常が描かれて始まる 2階建のモダン風の洒落た部屋に住むふたり だが同じベッドなのに離れて寝ている リアムの朝帰りのあと、入れ違うように声も掛けずに出かけるナタリー ふたりは破局を迎え、それぞれの道を歩もうとしていることが仄めかされていくオープニングである リアムは無職でロックスターを夢見る青年である バンド仲間のオリー(ウィル・メリック)、ガス(マット・ミルン)とともに「ヘッドクリーナー」という名のバンドを結成している そこで楽曲製作とリードギター&ボーカルをしているのがリアムだった だが壮大な夢があるものの、いまだにデモテープすら作れていない そんな時、レコード屋で出会ったのがナタリーだった 音楽の趣味が合うふたりは自然と惹かれ合う そして、彼の音楽に命が宿るかと思われていた 物語はふたりの破局の理由を回想で語り、馴れ初めやふたりの生活を紐解いていく そして敏腕プロデューサーを名乗るカーヴ(イアン・ハート)と出会い、チャンスを得ていく彼らだったが決定的な爪痕を残すには至らなかった 映画の主題は「失って気づくもの」という古典で、喪失によって「歌う意味」をリアムは取り戻す カーヴの告白、そして彼を突き動かしたもの そしてそのライヴがYoutubeで拡散され、離れ離れになったナタリーの元へと届くのである 前半の眩いばかりのふたりは、生活の中で破綻を迎える 体制や社会などの環境に不満をぶつけたリアムをナタリーは突き放すのだ IpodやiPhoneを目の敵にして、デジタルが音楽を殺したと嘯く彼は、エンターテイメントとしての音楽ではなくアートを目指している だが彼のアートは自己満足の世界から抜け出せず、成功者を妬むという悪循環へと向かう 自分が認められない理由を、他人に求める彼が成功に近づくはずもない リアムの暴走によって決定的な破綻を迎えたふたりは、それぞれが新しいパートナーとともに次のステージへと歩んでいく だが心残りが燻ったままのふたりは、何かにつけて相手を思い出す ナタリーに想いを寄せる同僚のエイドリアン(トム・ライリー)は、届かぬ想いに抗わない大人であり、「好きな人の選択を尊重する」姿勢を見せる ふたりを繋げていた音楽は、喪失という儀式を経ることによって強固になるのだが、この後半がほとんどファンタジーに近い 前半の離別とその後悔 ここまでは名作の予感だったのだが、後半のサプライズ演出と変わり身で駄作に成り下がったと言える 失ったものが大きいからこそ歌えた歌 そこに回復が生じたとして、同じような歌が歌えるだろうか 拡散された彼のライヴの価値は「感情を制御できなかった弱さ」であり、ぶっちゃけ「彼女とよろしくやっている歌」が共感を呼ぶとは考えづらい カップルとしては良い結果かも知れないが、アーティストとしては死んだも同然である このエンディングがこの映画にあっているとはとても思えないのである 彼が大衆を感動させたのは「感情のままに歌い、感情のままに歌えなくなった」からである この弱さが刺激を生み、彼の紡いだ言葉と音楽によって増幅される これが共感性を生んでいるはずなのに、幸せになった彼が同じ歌を歌えるだろうか 「同情」が生んだ評価は「嫉妬」に変わり、誰も見向きもしなくなるだろう 恋愛ソングに失恋が多いのは、有頂天には「誰かの音楽」は不要だからである 本作に限って言えば、ラストの再会は要らない 海の向こうで彼を知って、切なさと愛おしさが混じった表情でリアムを見つめる これだけで充分なのである そこからの物語は観客の想像に委ねるべきであり、誰もが幸せな結末を描く ゆえに誰もが想像するエンディングを敢えて描く必要はない いずれにせよ、劇中歌「リコリス・ガール」は紛れも無い名曲であり、その歌唱には心を揺さぶられた だからこそ、この高ぶった感情を急速に冷やすようなエンディングにはして欲しくなかった 復縁が予感できる関係なので、もっと音楽の余韻を楽しみたかった 感情というアーティステッィクな才能を感じさせておいて、ありきたりな帰結に着地してしまうのはセンスの問題であろうか 二人の破局を「語らずに観せている」のに、復縁を「語る」のは片手落ちであると感じた

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