愛唄ってこんなに内容のない楽曲だったかな
- dr.hawk さん
- 2019年1月28日 11時21分
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- 総合評価
2019.1.27 イオンシネマ京都桂川
2019年の日本映画
2017年の『キセキ あの日のソビト』に続く「GreeeeN」映画プロジェクト第2弾
余命を宣告された若者が感化された詩人に出会い充実した人生の意味を知るヒューマンドラマ
監督は河村泰祐
脚本はGReeeeN&清水匡
物語は主人公・野宮徹(横浜流星)の日常が描かれて始まる
彼は都内勤めのサラリーマンで、親元から離れて暮らしている
ある日、会社の健康診断の結果を受け取った徹はその結果に愕然とする
そして再検査の結果、ステージ4の末期ガンであることが宣告された
物語は失意の底にある徹が偶然落ちていた一冊の詩集を手にしたことから動き出す
その詩集は4年前に他界した伊藤凪(清原果耶)が書いた「K」で、それを落としたのが元子役俳優の相川比呂乃(成海璃子)だった
人生に消極的だった徹は、この詩集との出逢いによって劇的な方向へと変化する
その中で、比呂乃や旧友の坂本(飯島寛騎)、そして死んだと思われていた凪との出逢いによって無機質な人生に色をつけていく
GReeeeNの『愛唄』という楽曲をベースに創られた物語で、どこかにメンバーの体験が入っていると言う
だが物語の構成は「泣ける要素」を無理やり詰め込んだ結果、とても歪で正視に耐えない出来になっている
「余命」「病気」「トラウマ」「才能」
泣ける葛藤ぜんぶ盛りの「超こってり」ではあるものの、ほとんどファンタジーである
ステージ4まで進行しているガンなのに無自覚
白血病患者を深夜に無断で院外に連れ出す
ガン告知(しかも緩和ケア)なのに親族説明なし
この一連の病気関係の行動がありえなく、また「伝説の詩人と同じ病院」「旧友が自殺現場にいる」「旧友は詩人に打ちのめされて音楽やめた」など、展開が実にタイトすぎて笑う
「朝日が見たい」なら、病院の屋上でOKでは?と思ったり、看護師が個人情報をアホみたいに暴露しているのも萎える
もっともこの辺りの泣かせるための物語構築よりも、見せ方が驚くぐらい下手くそで、編集というよりは絵的センスが皆無である
冒頭から繰り返される「毎日に夢中だから息してることさえ忘れるんだ」というコピーのような詩
14歳が病床で書いた設定なので、内容や言語レベルはまあ理解できるが、このテイストで「詩」というのも微妙かつ、出版&ベストセラーという世界観からして笑わせに来ている
詩的センスは「直接的な言語到達」ではなく、読者の理解力と想像力による補完によって成立する文学である
人を感化させる言葉としてのクオリティは「詩」と言うよりは「詞」ではないかと感じたのは、作り手が詩人ではないからだろう
物語は「徹の変化」によって、周囲の人間の人生観や葛藤が変容するというもので、
言葉が出なくなった詩人、凪
本当の言葉にたどり着けないアーティスト、坂本
やりたいことが見つからない、徹
やりたいことがあるけどできない、比呂乃
それぞれが対になっていて、どんな人生でも思いがけない影響を与え続ける、という主題が込められている
だが、凪は言葉を取り戻したが、坂本はたどり着けないままだし、比呂乃の出来ない理由の払拭は具体的に描かれないので、脇役の葛藤を盛り込んだ割にもスッキリしない
特に比呂乃のパートはゴッソリ不要で、この設定なら「徹の病気を知って比呂乃の人生観が変わる」とか、「凪本人に会う」というエピソードは必須である
ゆえに「凪と徹を出会わせた」役割しかないのなら、それは坂本であっても問題はなかったはずである
あと、「Kの公式」エピソードでは、「気持ちのK」から「恋」「片想い」などの意味に変化していると思っていたが、これほどまでに説明的な映画なのに、ここは説明しないんだという不完全さが際立った
ロクな伏線の張り方もできないのに、きれいに回収すらできない
これでは素人の「ぼくの考えたさいきょうの泣ける物語」にしか思えず、むしろ「AIが書いたシナリオ」ぐらいに「感動要素だけを羅列して、観客の感情を理解できていない」と感じたほどである
いずれにせよ、これで泣けた人には申し訳ないが、私にとっては「失笑レベル」の創作だった
20歳過ぎた社会人が始めて恋を知るとか設定に無理がありすぎるし、彼の社会人としての交友もゼロでリアリティもない
人間の命の有限性と、時間的価値を描いているのに、この映画には「人間」が出てこない
どう考えたらこんな映画が出来上がり絶賛されてしまうのか理解不能である
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